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INPS JAPAN   IDN-InDepthNews - UN INSIDER

脅迫をやめて、対話を始めるべきだ(ヨハン・ガルトゥング・トランセンド平和大学学長)

IPS コラム=ヨハン・ガルトゥング】

 

我々は現在、国家システムの最悪の部分を目の当たりにしている。侮辱と脅迫、制裁のやり取り、暴力に訴える準備が進められ、米国は有事の際の保障として軍の一部をイスラエルに前方展開している。一方、一般の民衆に対する配慮や、戦争が中東や世界に及ぼす深刻な悪影響については真剣に考えられていない。

またメディア報道も、あたかも戦争は不可避かのごとく、両者の対立と事態の悪化を報じるニュースで埋め尽くされており、調停者を介して当事者が対話に臨み、問題解決を模索するという、武力対決よりも遥かに優れた選択肢に関しては、ほとんど報道されていない。

米国とイスラエルは、みずから核兵器保有国であるにもかかわらず、イランの核武装を危惧している。しかし、米国は、ソ連や中国との対話に進む前に、長いことそれらの国の核と共存していた。イスラエルもパキスタンの核と共存している。だとすれば、なぜ、まだ核武装した証拠もないイランと共存できないのだろうか。

 
国際原子力機関のモハメド・エルバラダイ元事務局長がひとつの答えを提供している。それは、西側諸国がイランの体制転換(レジームチェンジ)を望んでおり、核開発疑惑を口実に利用しているというものである。またエルバラダイ氏は、イランのマフムード・アフマディネジャド政権も、「シオニズムのない世界」を目指すとして、シャー体制後のイランやソ連崩壊後のロシア、サダム・フセイン後のイラク等になぞらえてイスラエルの体制転換を訴えている点を指摘している。アフマディネジャド大統領は、「イスラエルを地図から抹殺する」とは発言しておらず、もしイスラエルが1967年6月4日時点の国境を認めるならばイスラエルを国家承認するとしたリヤド宣言を支持している。

西側諸国は、こうした口実を根拠に、対イラン経済制裁を繰り返し、イラン民衆の間に不満と憎悪を掻き立て政府の政策の変更を迫ることを目指してきたが、結果は裏目にでてしまっている。確かにイラン国民はこうした制裁に苦しんできたが、彼らの不満は自国の指導者に対してよりも、むしろ苦境の直接的な原因であるイスラエル、米国、欧州連合、国連や、軟禁状態にある反体制派指導者フセイン・ムサウィ氏に向けられた。

米国・イスラエル両国は、シャー体制下のイランが、米国が任命した中東の管理者としてオマーンのドファール内戦等に積極的に介入していた時代にできれば回帰したいと願っているかもしれない。しかしシーア派のイランを使ってスンニ派が大勢を占める中東地域の秩序をはかろうとした試みには土台無理があった。モハンマド・レザー・シャーはCIAMIを後ろ盾に断行した1953年のクーデター以来、25年に亘る開発独裁体制を敷いたものの、結局はシーア派と共産党を含む幅広い国民の反発を招いて追放された。

アングロ・アメリカにとっては、諜報部門を使いながら、アラブやイスラム教政権を嘲笑するような態度をとることは普通のことなのかもしれない。しかし、イランにとっては、左翼であれ、中道であれ、右翼であれ、深い恥辱感しか残らない。

さらにイスラエルとアラブ諸国の対立(パレスチナ人との対立はその一部である)構図を考慮しておくことが重要である。事実上中東で唯一の核兵器保有国であるイスラエルが地域の盟主になることが出発点であるとは思われない。では、どのようなシナリオが議論されているのだろうか?

世界有数の石油輸出国であるイランは、ホルムズ海峡封鎖を示唆している。もしそのような事態となれば世界経済に極めて深刻な悪影響が及ぶだろう。とりわけバイオディーゼルに依存している地域では食糧難が引き起こされる恐れもある。西側諸国は、シーア・スンニ派の壁を越えるイスラム教徒の連帯を軽く見てはならない。もしイランに攻撃を加えるようなことになれば、シリアにヒズボラ、ハマス、その他のイスラム集団が手を組むことになるかもしれない。現在のサウジアラビアの立場すら、そのままではいられないかもしれない。

イランに体制転換をもたらし中東の覇権国としてイスラエルの拡張を継続させるという現在の政策は、かえって反イスラエル勢力を活気づかせることとなり、現実的ではない。またイスラエルがイランの核武装を止めさせるとして、たとえ関連施設のピンポイント爆撃に成功したところで、効果は一時的なものでしかないだろう。

それでは出口はあるのだろうか?

欧州では、冷戦期、1973年から75年にかけてヘルシンキ会議が開かれた。欧州に中距離ミサイルを配備したかった米国はこのプロセスを回避したが、それでも、これが東西の緊張緩和をもたらし、1989年の冷戦終結を準備することになった。

和解への第一歩は、ヘルシンキ・プロセスをモデルとした、中東安全平和会議の実現であろう。それは、2012年に予定されている、中東非核地帯化に関する会議に始まる。

中東地域でフィンランドの役割を果たせられるのは誰だろうか?それはもしエジプト国軍がキャンプデービッド合意に伴う米国からの援助が滞るリスクを冒してでも中東平和を志向する用意があるとしたら、「エジプトの新旧勢力」ということになるだろう。もしエジプトがそうした中東和平に貢献する役割を担うとしたら、将来長年に亘って中東における盟主の地位を確実なものとすることができるだろう。

そのような中東和平構想においては、以下のような議題が考えられるだろう。

*イスラエルとイランを含む中東非核兵器地帯

*民衆が自ら政権を選択できるよう自由で公正な選挙を共同で監督する仕組み

*1958年に発効したローマ条約(後に欧州連合へと発展した基本条約)をモデルとした安全保障機構を伴う「イスラエルと近隣諸国による中東コミュニティー」の創設

これらは全て、一時イスラエルも席巻した「アラブの春」の精神に沿うものである。さらに、共同開発のための経済協力を議題に加えてもいいだろう。

「イスラエルとイランの両方が核兵器を持つのと、両者がそれを持たないのと、どちらがよいか」と質問されたイスラエルのユダヤ人の65%が、どちらも持たない方がよいと回答している。また、64%が中東非核地帯化を支持している。これによってイスラエルが核兵器を放棄しなくてはならないということを説明されても、なおそのように回答しているのである。」


イラン国民も同じように答えるだろうか?おそらくそうだろう。彼らもまた生存を望んでいるのではないだろうか?それは、彼ら自身が決めることだ。(原文へ

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩

 

 

 

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