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収奪と殺しのライセンスをキャンセルする(ジュリオ・ゴドイ国際協力評議会理事・人権ジャーナリスト)

【パリIDN=ジュリオ・ゴドイ】

 

米国のフランクリン・D・ルーズベルト大統領は、非情で腐敗したニカラグアの独裁者アナスタシオ・ソモサ(大統領在職1937年-47年、51-56年)について、「彼は『Son of a Bitch(ろくでなし)』だが、『我々の』ろくでなしだ。」と言ったという伝説がある。
 
 
今日に至るまで歴史家の間では、このルーズベルト大統領の発言について、はたしてソモサについて言及したものか、それとも同じく当時のラテンアメリカ(ドミニカ共和国)における親米独裁者ラファエル・トルヒーリョ(大統領在職1930年-38年、42-52年)に言及したものかで論争が続いている。いずれにしてもソモサもトルヒーリョも実に『Son of a Bitch(ろくでなし)』であったことには変わりがない。
 
 
しかし両者とも生粋の反共産主義者であり、それこそが米国の親しい同盟者となりえる唯一の条件でもあった。そして両独裁者は、その後死ぬまで、ルーズベルトが言及した「『我々の』ろくでなし」であり続けたのである。トルヒーリョは1961年、おそらくCIAが操作したと思われるグループにより暗殺された。一方、ニカラグアの支配者としてソモサの跡を継いだ息子は1979年のサンディニスタ革命で政権の座を追われ、1年後亡命先のパラグアイでニカラグアが放った暗殺者に殺害された。

しかし米国はトルヒーリョ、ソモサとの経験から教訓を学ぶことはなかった。その後の米国歴代の大統領が-或いはこの点について欧州各国政府が-エジプトの独裁者ホスニ・ムバラク(大統領在職1981年-)やチュニジアの泥棒政治家ザイン・アル=アービディーン・ベンアリ(大統領在職1987年-2011年)について類似のコメントをしたかどうかは知られていないが、過去30年に亘って彼らが両独裁者を「我々のろくでなし(Our Son of a Bitch)」と見做していたことは明らかだ。

 
 
ムバラク、ベンアリ両氏は、イスラム原理主義を徹底的に弾圧する一方でイスラエルに対して穏健な姿勢をとったことから、米国やフランス政府は、両者がそれぞれ支配するエジプト、チュニジアを西側同盟国と認め、両政権の腐敗や不手際については黙認する姿勢を続けてきた。例えばフランス歴代政権は1987年以来一貫して、ベンアリ大統領を地中海南岸の安定・平和・経済成長の擁護者として讃えてきた。またフランス政府は、ベンアリ大統領の腐敗や残忍性に関する指摘に対しては、「誇張である」として一蹴するか、単純に無視する姿勢を示してきた。

1年前に、2人のジャーナリストがベンアリ政権の腐敗の内幕を検証した著書「La Regente de Carthago(カルタゴの統治者)」が出版された際、フランス当局は同書を黙殺した。フランス政府にとって、あえて第三者からベンアリの強盗行為について指摘させるまでもなかった。南フランスからヨット数隻が強奪された事件が発生したが、ベンアリの悪名高い妻レイラ・トラベルジィの2人の姪が直接的に関与していた。しかもそれらのヨットは後にトラベルジィの姪の名義で登録された上でチュニジアの港で発見されたのである。


1月中旬、ベンアリの政権維持が民衆蜂起により危うくなると、フランス政府は独裁者に事態の「正常化」を支援するため警察部隊の派遣を申し出た。結局、フランス政府は、ベンアリが敗北を認め首都チュニスから国外亡命する段階に至って初めて、泥棒と拷問人からなる政権を支援してきたことを悟った。

しかし欧米諸国政府のアラブ独裁者達との関係は、後者の振る舞いを黙認していたことにとどまらない。ベンアリ、ムバラク、その他のアラブ独裁者たちはフランス銀行、スイス銀行及び各国行政機関の支援を得て、個人蓄財に励んできた経緯がある。フランスの不正監視組織「シェルパ」によると、ベンアリの個人蓄財はパリ及びフランス各地に点在する高価な不動産を含めて少なくとも50億ドルにのぼる。シェルパのウィリアム・ボルドン代表はこの点について、「この莫大な財産はベンアリ氏がチュニジアの大統領としての合法的な所得で築き上げたものではあり得ない。」と語った。しかしベンアリの蓄財は、スイス銀行の公式発表にある4兆ドルにものぼるムバラク大統領による「エジプト信託」の規模にはとうてい及ばない。

欧州及び米国の歴代政権は、西側民主主義が掲げる価値観の優越を盛んに説く一方で、独裁者達との関係は地中海南岸地域に限定されたものではなかった。過去10年から20年の間、悪名高い独裁者であるガボンのオマール・ボンゴ、赤道ギニアのテオドロ・オビアン、コンゴ共和国のドニ・サスヌゲソ、そして元共産党の旧敵であるアンゴラのジョゼ・エドゥアルド・ドス・サントスさえもが(興味深いことにこれらはいずれも石油資源が豊かな国々である)、50年前にトルヒーリョやソモサがそうであったように、フランス、米国、英国、ドイツ政府から無条件の支持を享受してきた。

欧米諸国のイランに対する強硬姿勢は、これらの国々が一方でイスラエルの政策に寛容な姿勢を示し、イランの周辺諸国の独裁・腐敗政権を支援している実情と照らし合わせれば、典型的な2重基準(ダブルスタンダード)と言わざるを得ない。また欧米諸国のこうした偽善行為こそが、中東地域の平和と安定を目指す自らの努力を台無しにしている原因でもある。

腐敗・不正に対する対処についても、欧米諸国は失敗したと言えよう。なぜなら、チュニスで起こった民衆蜂起やフランスの「シェルパ」等の不正監視団体による圧力に晒されて初めて、しかも躊躇しながら、フランスやスイスの司法機関は、独裁者の口座凍結や、時にはそうした財産の祖国への返納に応じる決定を下す始末だからである。

例えばジャック・シラク元フランス大統領が現在が暮らしている住居はというと、レバノンを過去約20年間に亘って支配してきた大富豪ハリーリ一族の所有するパリの豪邸である。シラク氏は全く家賃を払っていない。明らかにハリーリ氏は「純粋に友情から」シラク氏に無料で豪邸での滞在を許可しているのである。

欧米諸国が(彼らの敵や彼らの利益と関係ない人々を殺害したり財産を奪う)泥棒や殺人者との共謀から教訓を学んだかどうかは、今のところ不明である。しかしトルヒーリョやソモサの時代まで遡って欧米諸国がそれら独裁者との共謀から教訓を学んだかどうかを一つの判断基準として今日の状況を推定するならば、その答えは多分に「教訓を学んでいない」という結論に辿り着かざるを得ないだろう。(原文へ

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩

*ジュリオ・ゴドイは国際協力評議会役員Global Cooperation Council)でグアテマラ出身の人権ジャーナリスト。IDN-InDepth News及びIPSドイツの記者、月刊誌「グローバルパスペクティブス」のコラムニストでもある。

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