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|北極圏|北極の氷が解け、熱い資源争いへ

Canadian and U.S. Coast Guard ships take part in a multi-year, multi-agency Arctic survey that will help define the Arctic continental shelf. Credit: Patrick Kelley, U.S. Coast Guard【アックスブリッジ(カナダ)IPS=スティーブン・リーヒ】

 

21世紀は「北極への殺到」の世紀になるかもしれない。ただしそれは、領有権の主張という形をとるのではなく、中国、ブラジル、インド等の北極に面していない国々が経済的・政治的影響力を行使しようという形で現れる。

中国はすでにノルウェー国内の北極圏に研究地点を構えており、8000トンの砕氷船も建造中である。

「カナダには、北極圏に影響力を持つ地域大国として、資源に富みながらも脆弱な生態系をもつこの地域を、『ワイルドウェスト(先住民の意向が無視される西部開拓時代の辺境地帯)』と化さないように保護していけるチャンスが巡ってきています。」と元ユーコン準州首相のトニー・ペニケット氏は語った。

 
2013年、カナダは「北極評議会」の議長国に就任する。北極評議会は、北極圏に係る共通の課題(持続可能な開発、環境保護等)に関し、先住民社会等の関与を得つつ、北極圏諸国間の協力・調和・交流を促進すること目的に1996年に設立された協議機関である。現在同評議会は、主に①加盟国の拡大問題、②北極海を航行する船舶の増加問題、③資源掘削の問題、④地球温暖化で既に大きな悪影響を被っている脆弱な環境の保護問題、に直面している。

「北極評議会」が特徴的なのは、8つの加盟国(カナダ、ロシア、米国、ノルウェー、フィンランド、スウェーデン、アイスランド、デンマーク)に加えて、6つの先住民族集団がメンバーとして参加していることである(ただし、投票権は主権国家にしかない)。

また現在、英国、フランス、ドイツ、スペイン、ポーランド、オランダの6ヶ国にオブザーバー参加を認められている。

北極圏を巡る論争は稀で評議会は、協議のための重要なプラットフォームとしての役割を果たしている。2010年、ロシアとノルウェーはバレンツ海の200カイリ排他的経済水域の境界画定条約に調印した。ロモノソフ海嶺の一部領有権主張を巡るロシア、デンマーク、カナダ間の論争については、現在、海洋法に関する国際連合条約に則って解決に向けた協議が進められている。

「しかし最近では、北極圏に面していない国々、すなわちEU、他の欧州諸国、日本、韓国などがオブザーバー参加を求めるなど、加盟申請問題に苦慮しています。はたして『北極評議会』は、従来通りの影響力を維持していくためには、他の国々により大きな役割を認めるべきでしょうか?それとも従来のメンバーに枠を限定すべきでしょうか?ちなみにロシアやカナダは加盟国の拡大について強硬に反対の姿勢をとっています。また先住民族集団も、自らの影響力や声が薄れるのを懸念して拡大に反対の立場を表明しています。」とペニケット氏はIPSの取材に応じて語った。

一方、ブリティッシュ・コロンビア大学のマイケル・バイヤーズ教授(国際法)は、「加盟国の拡大は評議会の機能を大幅に強化することになります。つまり、より大きな影響力をもつ国を参画させることで、北極圏に対する一般市民の関心を集めることがより可能となるのです。正当な権益を有する国々を排除してしまうことは、新たな軋轢を生むことになります。」と語った。

昨年夏、ロシア船籍の「ウラジミール・チーホノフ号」がスーパータンカーとして初めて欧州とアジアを結ぶ5500キロの「北東航路」を航行した。これはロシアでは「北方航路」と呼ばれるもので、航行が可能な期間は夏の2か月のみだが、パナマ運河経由の航路と比較すると数千キロ短縮できる。

温暖化の影響で氷が少なくなってきているとはいえ、依然として北極は危険な場所である。先月には、ロシアの海上石油採掘装置が嵐により水没し、53人の従業員が亡くなった。幸いなことに、採掘装置自体は港に曳航され、石油漏れはなかった。

「『北極評議会』は、新たに北極地域における遭難者の捜索・救助協力に関する合意を先導しましたが、未だに原油流出事故への対応に関する合意はなく、石油・ガス掘削に伴う環境安全基準さえも存在しません。」と北極と水問題に取り組んでいる非政府組織「ウォルター&ダンカン・ゴードン財団」の研究員サラ・フレンチ氏は語った。

「原油流出に関する予備的な討論はありましたが、北極圏における掘削作業に関する安全基準については全く議論されたことはありません。」とフレンチ氏はIPSの取材に応じて語った。

イヌイット極域評議会がこの問題を取り上げたことがありますが、彼らは、環境保護に関して共通の決まりを設けたいと強く願っているのです。」とフレンチ氏は語った。

カナダは(来年)議長国として、先住民の声を強めるなど、北極圏の問題についてリーダーシップを発揮するできる立場になります、とフレンチ氏は言う。

「カナダは本来であればこの分野でリーダーシップが発揮できるのですがしかし、スティーヴン・ハーパー政権の下では無理でしょう。」とバイヤーズ教授は語った。

「気候変動とその結果に関する問題は、北極圏では最優先すべき問題です。」とバイヤーズ教授は言う。

現在のハーパー政権の下、カナダは、地球温暖化問題に関しては、京都議定書からの離脱を宣言するなど、「ならず者国家」であった。カナダは同議定書で当初合意したとおり二酸化炭素排出を6%削減するどころか、排出量を24%も増加させている。IPSが先月報じたとおり、ハーパー政権は先月正式に京都議定書からの離脱を宣言した。

「カナダは(京都議定書からの脱退によって)気候変動問題に関して逆行的な立場をとっていると見られています。このことからカナダは北極評議会の議長国になっても、はたしてリーダーシップを発揮できるかどうか危ぶまれているのです。」とバイヤーズ教授は語った。

バイヤーズ教授は、「議長国就任はたしかにカナダにとって良い機会だと思うが、現政権はこの機会を無駄にしてしまわないかだろうかと、心配している。」と語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan