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|テロとの戦い|「妊婦が鎖につながれ飢えさせられた」―報告書が明らかにした深い闇

“We’ve got to spend time in the shadows in the intelligence world,” said then Vice President Dick Cheney (left) in 2001. “A lot of what needs to be done here will have to be done quickly, without any discussion."

【ニューヨークIPS=ジョージ・ガオ】

 

米国による「テロとの戦い」については未だに多くが秘密のベールに包まれたままだが、「オープン・ソサエティ正義イニシアティブ」は2月5日、米中央情報局(CIA)が9.11同時多発テロのあとに行った拘束、特別拘置引渡し、拷問などの秘密作戦の対象となった136名のケースを詳細にまとめた報告書を発表し、その一端を明らかにした。

グローバル化する拷問」と題された正義イニシアティブ報告書は、CIAがテロ容疑者を「ブラックサイト」として知られる秘密刑務所に拘束したことを確認している。またCIAが行った「特別拘置引渡し」については、「抑留者を拘留または尋問を目的に外国の政府に引き渡した違法行為」と断じている。

 
また報告書は、こうしてCIAによって引渡された抑留者は世界各国の秘密刑務所で拷問や暴行を受けており、中には間違って拘留された者や、結果的に何の罪にも問うことができなかった者もいたことを明らかにしている。
 
「オープン・ソサエティ正義イニシアティブ国家安全保障・テロ対策プログラム」の上級法務官で報告書の執筆者アムリト・シン氏は、「まさにそうした(冤罪)事件が問題なのです。個々の内容は極めて憂慮すべきものです。」とIPSの取材に対して語った。

報告書が詳細に記録した136人の1人、ファティマ・ブシャールさんの場合を見てみよう。2004年、CIAとタイ当局はバンコクの空港でブシャールさんの身柄を拘束、鎖で壁に繋ぎ5日間食事を与えないまま監禁したのち、リビアに移送した。この当時、ブシャールさんは妊娠4ヶ月半だった。

「この報告書を執筆した理由の一つは、ブシャールさんのような人々の身に実際に降りかかった事実を世間に公表することが極めて重要だと思ったからです。」とシン氏は語った。

また報告書は、拷問がその違法性に加えて誤った情報を生み出す温床になっているとして、2002年に米国によってエジプトに特別拘置引渡しされたイブン・アルシェイク・アルリビさんのケースを引用している。アルリビさんは、拷問に耐えかねて、イラクやアルカイダ、さらには(イラクによる)生物・化学兵器の使用といった架空の情報を捏造して、尋問官に告白した。

2003年、コリン・パウエル国務長官(当時)は、イラクとの開戦を訴えた国連演説の中で、こうしたアルリビさんの告白内容を引用している。

この報告書は9.11同時多発テロ後に米国が推進した反テロリズム政策を検討する目的で作成されたもので、題辞には2001年に放送されたNBCの番組「Meet the Press」でのティム・ルサート記者によるディック・チェイニー副大統領(当時)のインタビュー内容が引用されている。

そのインタビューでチェイニー副大統領は、「我々は諜報の世界に潜まねばならない。そこでやるべき事の多くは、議論抜きで速やかに実行に移さねばならない。」と述べている。」

また報告書は、CIAに秘密刑務所を提供したり、容疑者の逮捕や移送、抑留者への拷問、CIAへの情報提供などを通じて、秘密工作に共謀した54カ国にのぼる「外国政府」のリストを掲載している。

「この報告書は、米国が国際社会に及ぼしている影響力を如実に物語っています。」「この場合、米国がテロ対策の名目で人権侵害の罪を犯すパートナーを募る影響力を有していることを示しています。」とシン氏は語った。

「抑制と均衡」と「超法規的殺害」

2002年、マヘール・アラールさんはジョン・F・ケネディ空港で米国当局に身柄を拘束された。その後CIAは、アラールさんをヨルダンの首都アンマンに移送、アラールさんはそこでヨルダン官憲の暴行を受けた。アラールさんは、さらにシリアに特別拘置引渡しされ、電線の鞭で殴られたり、電気ショックを使った拷問に晒されながら、墓のような独房に10ヶ月に亘って監禁された。
 
 
アラールさんの弁護を担当した「憲法上の権利センター」シニアスタッフのマリア・ラフード弁護士はIPSの取材に対して「私たちはアラールさんを移送して拷問にかけた米政府関係者を訴えましたが、勝訴には至りませんでした。」と語った。

ラフード弁護士は「概ね被告側(米国政府)は、『米国政府が拷問のためにシリアに移送したという原告の主張がたとえ事実だとしても、米国政府の役人を罪に問えない』といういつもの主張を繰り返すのです。」と指摘した上で、「つまり、政府関係者による行動が『国家の安全保障』に関わる場合、『司法の手が届かない』、言い換えれば、起訴するのはほぼ不可能となるのです。」と語った。

「その結果、アラールさんの件では明らかに憲法違反(人権侵害)が認められるにもかかわらず、国からの救済措置は一切行われていません。米国内での訴訟は行き詰まり、彼に対する政府の謝罪は未だになされていません。それどころか、アラールさんは未だに政府の警戒リストに載っているのが実情です。」とラフード弁護士は付け加えた。

またラフード弁護士は、超法規的殺人を巡る事件を起訴する際にも同様の問題に直面しているとして、具体例として現在係争中の「アウラキ対パネッタ裁判」(米国政府による無人攻撃機で暗殺された米国籍の市民3人の遺族が政府を起訴した裁判)を挙げだ。

「被告側(元CIA長官のレオン・パネッタ氏デイビッド・ペトレイアス氏他数名)は、司法当局は本件を裁けないとして、訴えを却下させようとしました。」とラフード弁護士は語った。

さらにラフード弁護士は、米国政府における行政と司法のパワーバランスについて問われ、「行政府の相対的な力が益々増大し続けています。その背景には、行政府が力を増す一方で、司法が行政の意見に従う傾向を強めている現状があります。」と語った。

ニューヨーク大学法学部教授で国連の「超法規的・略式・恣意的処刑に関する特別報告者」を務めたフィリップ・アルストン氏IPSの取材に対して「行政府は、司法から自由裁量権を与えられているのが実態です。」と語った。

「とりわけ司法サイドは、CIAが関与する問題に関しては法の支配を維持する責任を放棄してしまっています。その結果、行政府には、連邦議会による形式的な監督(公文書を見る限りその実態は単なる追認に等しい)に従う義務を除けば、独自に判断する裁量が任されています。」

シン氏はIPSの取材に対して、「今日の国際社会には、間違いなく深刻なテロの脅威が存在しており、適切かつ法に則った対処をしていかなければなりません。しかしテロの脅威が存在するからといって、すでに確立された国内及び国際法から逸脱して良いという根拠にはならないのです。」と語った。

「米国の裁判所は、概ね、(米国政府が関与した)拷問による犠牲者に対して、補償の支払いを却下しています。本来裁判所には、行政による権力乱用を抑制する役割がありますが米国の裁判所はその使命を果たしているとは言えません。」とシン氏は語った。

一方、「憲法上の権利センター(CCR)」は、米国の世論を揺るがしている「米国に差し迫った脅威を与えるアルカイダ系と疑われる米国市民を、米政府が殺害できる法的根拠」とされる司法省の白書について、声明を発表している。

CCR
のビンセント・ウォレン事務局長は、この白書について、「(ジョージ・W・)ブッシュ政権の拷問メモと多くの類似性があり戦慄を覚えます。これらの文書は、拷問や超法規的殺人を正当化するために外部の検査を受けることなく作成されたものに他ありません。」と語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

 

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