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INPS JAPAN   IDN-InDepthNews - UN INSIDER

|ハイチ|報告書が明らかにする震災後の「サバイバルセックス」の実情

 

【ニューヨークINPS=カンヤ・ド・アルメイダ】

 

ハイチには2010年12月の大地震の被災者が暮らす仮設キャンプが未だに多く残っている。両親を失い3歳の娘を抱える18歳のカテリンさんも、瓦礫が散乱するCroix Deprezキャンプで飢えと隣り合わせの生活を余儀なくされている難民の一人である。

身寄りがないカテリンさんは、子どもと生きていくために、僅かな食べ物や現金と引き換えに年上の男性に体を売って飢えをしのいでいる。しかし顧客の男から殴られたり暴行を受けることは日常茶飯事で、中にはコンドームの装着を拒否されたり、一晩過ごした後に支払いを拒否されることもしばしばだという。

 
カテリンさんは、いつか学校に戻り、将来的には娘の教育費を貯蓄できるようになることを夢見ているが、「でも子供がお腹を空かせて泣けば、私はこの子を食べさせるために何でもしなければならないの。」と、諦めがちに語った。

 
カテリンさんは、1月12日に発表された共同レポートに収録されている数百人にのぼる被面接者の一人である。このレポートは、MADRE、生き残りのための女性委員会(KOFAVIV)、ニューヨーク市立大学ロースクール国際女性人権クリニック(IWHR)、ニューヨーク大学ロースクール世界正義クリニック (GJC) 、カリフォルニア大学へスティング法律大学ジェンダー・難民研究センター(CGRS)が共同で作成した。

合同報告書は、100万人以上が家を失い、多くの仮設キャンプが無法地帯と化す事態をもたらした大震災から2年が経過し、人道支援要員や国際NGO、監視団が次々とハイチを後にしている中で、発表された。報告書は、時間が経過してもハイチの女性や少女達を取り巻く危機は依然として深刻な状況にあることを訴えている。

震災後に仮設キャンプで多発したレイプ問題についてはよく記録・報道されているが、その後も避難所の女性や少女達が直面している恐るべき実態については、ほとんど知られていない、と人権活動家は述べている。

「難民の女性や少女が過酷な環境から生きるために体を売ることを余儀なくされているのです。これは各地の仮設キャンプで蔓延している実情ですが、ハイチ政府や国際社会からほとんど注目をされていないのです。」とKOFAVIVの共同設立者のマリー・エラミス・デルバさんは語った。

おおよそ30万人の女性や少女が首都ポルトー・プランス市内及び周辺の仮設キャンプで未だに悲惨な生活を余儀なくされている。こうした場所では、家族や家、学校、医療施設といった既存の社会構造が極貧と絶望、飢餓に直面して崩壊してしまい、彼女たちの多くは、無防備で絶望的な状況に追い込まれている。

「国際援助組織が次々とハイチを去っていく中、それまで被災者が辛うじて利用できていた僅かなサービスさえも途絶えたため、若い子では13歳の少女が、サンドイッチの欠片や、数ドルの現金、或いは教育へのアクセスを確保するために体を売っているのです。」と報告書の共同執筆者でMADRE人権アドボカシーディレクターのリサ・デーヴィスさんは語った。

調査グループはChamp de MarsChrist RoiCroix Deprezの仮設キャンプ及びカルフール近辺で生活している18歳から32歳の女性と少女達を対象に綿密なインタビューを実施した。共同報告書は、被災後に現出したこの「サバイバル経済」に関与している女性の誰もが、自らを商業的セックスワーカーとは認識しておらず、むしろ体を売る行為は、究極の困難に直面して発揮された「コーピング機構coping mechanism=環境のストレスに対して、単に受動的に反応するのではなくて、能動的に対処・克服しようとする適応機構)」と結論付けている。

こうした性交渉の大半は、若い難民女性と仮設キャンプで各種権限を持っている男性(キャッシュ・フォー・ワーク事業の管理者、食糧配給の責任者、教育プログラム担当者)の間で成立していた。

2012年版UNICEFレポート
によると、ハイチの教育インフラは2010年の震災前の段階で既に深刻な状態にあった。これにさらに追い打ちをかけるかのように、震災では4000を超える教育施設が崩壊し、250万人の生徒たち(ハイチの18歳以下の青少年人口の半数以上)が教育機会を失った。

さらに深刻な医療施設の不足により、状況はさらに悪化した。

昨年、ヒューマンライツウォッチが発表した調査報告書は、ほとんどの女性が産婦人科によるケアを受けられない深刻な状況を明らかにした。

インタビューに応じた128人の妊婦全員が「病院で出産したかった」と回答したが、実際は半数以上が医療施設以外で、訓練を受けた医療関係者が立ち会えない環境で出産していた。また彼女達の多くが、仮設キャンプのテントの中の泥の床で出産するか、病院へ向かう途中に路上で出産していた。

こうした性交渉に関する信頼できるデータはないものの、デイビス氏は、「現在の状況から判断して、女性や少女が今後HIVやその他の性感染症に罹患するリスクは益々高まるとしか考えられません。ハイチは既にHIV罹患率で西半球最悪の状況に見舞われている国なのです。」と語った。

医療の欠如は、違法な堕胎手術や母親と幼児の死亡率が増加することを意味する。ハイチでは女性・少女の妊娠と出産に伴う年間死亡数は既に3000人に及んでいることから、震災後における母子保健をとりまく更なる状況の悪化は、様々な困難に喘いでいるこの小さな島国にとって災いとなりかねない。

被災した人々が直面している当面の危機と短期的なニーズに対処することは極めて重要だが、多くの専門家は、サバイバルセックスに女性や少女達を駆り立てる遠因やその結果について深い懸念を抱いている。

欧米諸国が課した構造調整政策が主にもたらした経済の未発達、ドナー諸国による誤った援助政策、性暴力(GBV)とりわけ政情が不安定な時期におこる女性に対する暴力を長らく顧みなかった社会体質これらの諸要素全てが、今日の危機を醸成してきた。

KOFAVIVのような草の根組織は、性暴力やサバイバルセックスの問題に数多く取り組んできましたが、私たちの声が必ずしも政府当局に届くとは限りません。私たちが政策決定過程に含まれることはめったにないので、変化をもたらす予算を擁する政府機関が、私たちの見解や現場からの報告に耳を傾けたりすることはないのです。」とKOFAVIVの共同創設者のマイラ・ヴィラード・アポロンさんは語った。

「女性は政府においても平等な処遇を受けていません、ハイチ政府の閣僚17名の内、女性は僅か3人にすぎないのです。」とヴィラード・アポロンさんは付加えた。

ヴィラード・アポロンさんは、家庭内においても男兄弟の通学が優先されるなど長らく権利を奪われてきた少女達に、より包括的な教育枠組みを設定する必要性を繰り返し強調した。

ミシェル・マーテリー大統領は、初等教育を無償の義務教育とする憲法規定を施行するとのコミットメントを表明していますが、これはハイチの現実から大きくかけ離れた発言です。私たちは、米国上院財政委員会の委員長が、ハイチで教育費に充てられるはずの数百万ドルにのぼる税金が用途不明になっているとしている点を憂慮しています。」と報告書の共同執筆者CGRSの人権弁護士のブレイン・ブッキー氏は語った。

またブッキー氏は、危機を乗り切るための方策として、地元の草の根支援連合組織に対する予算配分の増加、あらゆる種類の性暴力と搾取問題により有効に対処するための政府及び司法制度の再編成、援助資金が国際NGOや民間請負業者や企業に還流しないよう復興資金を管理する権限を強化する等の様々な提案を行っている。

「サバイバルセックスの問題は、ハイチの女性や少女達が生きていくために必要なものにアクセスできるようになるまで、解消することはありません。ハイチの女性たちは経済的機会と基本的資源へのアクセスを求めています。国際社会はハイチ政府と緊密に協力して雇用の創出につとめるとともに、女性を対象にしたマイクロクレジットの提供や全ての子供を対象にした無料教育を実施すべきです。」とGJCで臨床法を教えているマーガレット・サッタースウェイト教授は語った。

翻訳=INPS Japan浅霧勝浩

 

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