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INPS JAPAN   IDN-InDepthNews - UN INSIDER

欧州のどこかへ何とかして逃れようとする人びと

【アテネIPS=アポストリス・フォティアディス】

 

熾烈な内戦状態が続くシリアから逃れてヨーロッパに向かう人々が増える中、ギリシャはできれば通過したくない場所になってきた。

 

現在、そうしたシリア難民の大半(他の国々からの難民もそうだが)は、ギリシャ以外の場所を通過して北部ヨーロッパに逃れようとしている。そしてその選択肢の一つとして、やはり難民に対して厳しいバルカン諸国を通るルートが浮上してきている。

 

既に対処能力を超える数の難民が流入し、同時に経済危機の影響で排外主義がはびこるギリシャでは、政府が2012年春から国境警備を強化しはじめ、「非正規移民」とみられる外国人の多くを難民収容所に送致してきた。しかし最近になって、収容された難民に対する警察による虐待や人権侵害の実態が明るみに出てきている。

 

「こうしたなか、バルカン半島を経由してヨーロッパ北部を目指す『バルカンルート』が、移民たちの間で、ギリギリ最後の選択肢とみなされていますが、実際の逃避行は恐怖の連続にほかなりません。」と、この越境ルートを経験したアフガニスタン出身の音楽家ハサム・ナザリさん(25)は語った。

 

ナザリさんは、バルカン半島を通過してハンガリーに抜け、そこから最終的にオーストリアに向かおうとしたが5度も失敗し、現在は所持金を使い果たしたため、ギリシャに舞い戻っている。

 

「ギリシャ国境を抜けてマケドニアに入ったところで、13才の少女が暴力団メンバーに強姦されているのを目撃しました。不法越境者は、いざというときユーロを所持していないと、暴行を受けることになります。」とナザリさんはIPSの取材に対して語った。

 

またナザリさんは、「国境地帯での追いはぎ行為は珍しくありません」と指摘したうえで、「暴力団は、国境を越えて暫くのところにある空家付近で、越境難民を待ち伏せしていました。彼らはバイクにのった10人から12人のグループで、難民を見つけると、銃で脅して森の中へ連行し、そこで身ぐるみを剥いで貴重品を略奪するのです。もしその際暴行されなかったとしたら運がいいほうです。」と語った。

 

またナザリさんによると、地元警察は実態を知っていながら見て見ぬふりなのだという。「私たちは警察官の目の前で暴行を受けましたが、何もしてくれませんでした。彼らは地元の暴力団より、越境してくる難民や不法移民を厳しく取り締まる方に関心があるのです。」とナザリさんは付け加えた。

 

欧州連合(EUの対外国境管理を担当する「フロンテックス」(Frontex)のイザベラ・クーパー報道官によると、バルカンルートをとる移民や難民の数が、2013年初めから急増しているという。

 

「西バルカン地域を通る難民の数は今年に入って300%も増加しています。一方、難民の流入数が最も多くなっているのは(バルカン半島東部の)ブルガリアで、今年の初め以来、連日60人から70人、時には100人を超える人びとが越境してきています。また、シリア、アルジェリア、イラク、パキスタンからの難民数も今年に入って6倍になっています。」とクーバー報道官はIPSの取材に対して語った。

 

国連の難民支援機関UNHCRブルガリア事務所のボリス・チェシルコフ広報官は、「このところ(ブルガリアへのギリシャ・トルコからの)越境ルートは、東にシフトしてきています。」と指摘したうえで、「今では(トルコと国境を接するブルガリア南東部にある)ストランジャ山脈の深い森が最大の違法越境ルートとなっています。しかしここは視界もほとんどきかない極めて過酷な地形です。」と語った。

 

密入国を手引きする業者らは、既にこうした事情を把握しており、切羽詰まった移民や難民の苦境につけこんで、料金の引き上げを図っている。例えば、エブロス川沿いのトルコ-ギリシャ国境への案内料は、以前は移民一人当たり500ユーロ(約67,000円)だったが、今では3500ユーロ(約466,000円)に跳ね上がっている。

 

チェシルコフ報道官は、「しかし業者らは、こうして法外な金額を巻き上げておきながら、実際には国境近くまで案内するのみで、ともに越境したりしません。結局、難民らは自らのリスクで越境することになるのです。」と語り、具体的な事例として、今はトルコ-ギリシャ国境から北に130キロのスリベンにある刑務所に服役中のシリア難民ウヘイダ・ヌールさん(35歳、4人の子どもの母親)について語った。

 

「ヌールさんが夫と4人のこどもとともにブルガリアに越境してきたのは2012年12月のことで、一家はトルコ-ギリシャ国境に近いパストロゴール(Pastrogor)難民センターに収容されました。しかし1月のある日、妻のウヘイダさんが子ども2人(息子と娘)を連れてセンターを抜け出し、セルビアへの違法越境を試みて国境警備隊に捕まったのです。その結果、彼女には禁固8カ月の実刑判決が下され、以来、スリベンの刑務所に服役しています。」とチェルシコフ報道官はIPSの取材に対して語った。

 

「判決では8月に拘留期限が過ぎるはずですが、私が把握している限り、彼女はまだ釈放されていません。また、30人の亡命希望者がソフィア中央刑務所に収容されています。」とチェルシコフ報道官は付け加えた。

 

一方セルビアも、増え続ける難民や不法移民の重圧にあえいでいる。セルビアの非政府団体「グルパ484(Grupa 484)」が設立したセルビア移住センターの統計によると、セルビアに流入した非正規移民の数は、2000人(2010年)から9500人(2011年)、1万5000人(2012年)と急増し続けている。また今年はこれまでに既に20,000人が越境入国してきているという。

 

一方、セルビア国境警察のネナド・バノビッチ長官は、「今年前半期は、セルビアに入国する違法移民の数がやや減少傾向にあります。」と述べ、異なった見解を示している。バノビッチ長官は、この減少傾向の理由として、セルビアを通過しない2つの新しいルート(トルコ-ブルガリアールーマニアと、ギリシャーマケドニアーコソボーモンテネグロークロアチア)の存在を指摘した。

 

しかし、ギリシャの場合と同様に、増え続ける難民の重圧に、ブルガリア、セルビア両国でも既存の難民収容施設では対応できなくなってきている。

 

ブルガリアには首都ソフィア及びトルコ国境付近のバンヤとパストロゴールに合計3つの難民センターがあるが、どこも過剰収容状態となっているため、政府は2週間前、50万レフ(約3400万円)の予算を投入して新たに500人を収容できる施設を建設することを決めた。

 

セルビア政府も流入し続ける難民対策に苦慮している。「我々は難民対策に最善を尽くしているが、予算の制約があるうえに、ヨーロッパ諸国からの支援も一切得られていない状況です。」とバノビッチ長官は語った。

 

「こうした幾多の困難があるにもかかわらず、セルビア北端のハンガリー国境付近の街ボティッツァ(ベオグラードの北184キロ)を目指す移民が後を絶たない。そこでは、多くの移民が市内の古いレンガ工場や街に隣接した森に滞在しながら、街の北数キロにあるハンガリー国境を超える機会を窺っています。」と音楽家のナザリさんは語った。

 

彼らの大半は越境中に国境警備隊に捕まり送り返される。「ハンガリー国境で捕まった越境者の大半は非公式にセルビア側に送り返されますが、中には公式な手続きを経て本国に強制送還されるものもいます。」と「グルパ484」の法律専門家ミロラバ・ジェラチッチ氏は指摘した。

 

しかし、越境に成功した者たちが、何度でも挑戦するよう励ましのメッセージを送り続けるなか、リスクを覚悟でこうしたルートを経由してヨーロッパ北部への違法越境を試みる者が後を絶たない。(原文へ

 

翻訳=INPS Japan

 

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