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|キルギス|10代で略奪婚による花嫁となった母親の告白

Photo: Mairam Bibi, a victim of bride kidnapping, with her sons. Credit: Mairam Bibi【ナリンIDN=アクイラ・ハッサンザダ】

マイラム・ビビさんは、「息子には決して父親の真似をしてほしくない。」と語った。「父親」とは、かつて10代の少女だったマイラムさんを誘拐して暴力的な婚姻生活を強いた夫のことである。

現在41歳になるマイラムさんは小さな藁葺屋根の自宅に座って記者に身の上話を聞かせてくれたが、略奪婚を強いられた経験を語れるキルギス女性は少なくない。

Map of Kyrgistan彼女が10代だったある朝、登校していると突然古い車が目の前で急停止した。2人の男たちが車から出てきてマイラムさんに向かって突進してきた。彼女は恐怖で立ち竦んだ。マイラムさんは、若い女性が自分が住む街で突然誘拐されて結婚を強いられる風習「アラ・カチュー」について耳にしたことはあったが、この時までまさか自分が「アラ・カチュー」の犠牲者になるとは想像だにしていなかった。マイラムさんは、人助けができるよう、医学系の学校に進学して医者になるのが夢だった。

2年前、マイラムさんは(今回の取材時と同じく)この藁葺屋根の自宅で、黒いスカーフを被って座っていた。一瞬物思いに耽ったマイラムさんは、2000年の夏のある日のことを考えていた。それは、(略奪婚に遭遇する以前)かつて常に夢見ていた学校を卒業する日のことだ。

しかし突然耳に入ってきた誰かが嘆き悲しむ甲高い声で、マイラムさんは現実に引き戻された。目を開けると、夫の葬儀に伴う会食が行われている最中で、弔問客に囲まれて黒の服と黒のスカーフを纏った自分自身の姿が目に入ってきた。

絶望に打ちひしがれ言葉に詰まったマイラムさんは、自分の人生を台無しにした男が今やこの世を去ったことを実感したのだった。

「私は、17年前に自分を誘拐した男、つまり私の夫が今や心臓発作でなくなったという現実を喜ぶべきなのか、それとも悲しむべきなのか、よくわかりません。」とマリアムさんは語った。

マイラムさんは、夫のことを思い出すと苦笑いし、「あの男は何年にもわたって私を虐待してきました。私は子供たちを守りたい一心で我慢するしかありませんでした。彼は建設現場の作業員で、その収入で自分と子供たちの生活を支えてきました。」と語った。

略奪婚「アラ・カチュー」については何年にもわたって警察に被害届が出されているにもかかわらず、キルギスでは未だに一部でこの風習が実践されている。人権問題の研究者らは、「キルギス政府は、略奪婚関連法を十分施行しておらず、高い確率で横行している女性や女児に対する家庭内暴力に対処できていない。」と語っている。

マイラムさんの夫が亡くなった翌年の2018年5月、当時大学生のブルライ・トゥルダーリ・クズさんが略奪婚を目的とする男に誘拐された。犯人は逮捕されたが、彼女が警察署で告訴手続きをしているときに、その犯人によって刺殺されてしまった。この事件を契機に、キルギスの女性たちは、既に非合法のはずの「アラ・カチュー」の問題をソーシャルメディアの各種プラットフォームにアップして国際機関にこの問題をとりあげるよう訴えた。しかし一方で、取材に応じたある匿名希望の女性は、「略奪婚の犠牲者の多くは、誘拐者らによって沈黙を守るよう強制されているか、家族の誇りを守るためとして声を封じられている。」と語った。

SDGs Goal 16人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチのヒラリー・マルゴリス研究員は、「キルギス政府は、本来女性や女児らの命を守るべき法律を施行するために最善を尽くしているとは言えない。」と指摘したうえで、「キルギス政府は、女性や女児に対する保護責任を他に転嫁することはできません。今のままでは、法律はあってもその施行を待っている間に、ブルライさんのような女性がこれからも犠牲になっていくことを意味します。」と語った。

キルギス政府の統計によると、2019年の最初の3か月だけでも2000件以上の家庭内暴力が警察に通報されている。

人権擁護団体がラジオ・フリー・ヨーロッパとラジオ・リバティーに述べたところによると、こうした家庭内暴力案件の60%が、キルギスで横行している略奪婚に起因する身体的な暴力を含んでいた。

国連開発計画によると、キルギスでは毎年1000人近い少女らが略奪婚の犠牲になっており、政府は、この非合法化されているはずの慣習を防止する法律の適用や安全対策はなされていない。

国連の女子差別撤廃委員会は、9月に「略奪婚」に関する調査報告書を発表し、その中で「キルギスにおける誘拐、強姦、強制結婚を強いる文化により、女性たちの人権が阻害されている。」と指摘するとともに、キルギス政府に対して、「とりわけ、あらゆる誘拐を防止調査するとともに誘拐罪を罰し犠牲者に賠償金を支払うことで、法律と法執行体制を強化するよう」呼びかけた。

a woman and four men on horseback. May be an example of the tradition of capturing or "kidnapping" a bride./ Public Domain「アラ・カチュー」は2013年に違法とされたが、一部のキルギス人は伝統の名のもとに今でも行動に移している。キルギス当局は、この風習が夫婦間レイプやトラウマに発展する暴力行為であると認定している。しかし、一部の地域では「アラ・カチュー」をソ連による支配以前からある伝統と呼び、なかには、略奪婚を実行に移す背景には部族の威信があるとさえ言うものもいる。ナルンで略奪婚を経験したある女性に取材した際、その女性は、「略奪婚は、伝統の名のもとに行われる誇るべき慣行」と語った。

マイラムさんは現在、夫の遺族年金で4人の息子たちを育てている。また政府からは4人の子どもたちへの資金と、必需品の購入と公共料金の支払いを支援する援助を受けている。マイラムさんは、自分自身は略奪婚の犠牲となり誘拐者である「夫」から虐待を受けてきたが、自分の息子たちには教育を施し、より良い生活をさせたいと希望している。

マイラムさんは、一縷の望み託すかのように子供たちを見つめながら、「子供たちには父親の歩んだ道は行かせません。17歳になる長男のクバンは、父親が私にした仕打ちを知っていて、自分は女の子を傷つけたり力づくで迫ったりするようなことはしないと言っています。願わくば、彼には普通の結婚をして幸せな家庭を築くのを見届けたい。」と語った。(原文へ

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筆者は、中央アジア大学(キルギス)でメディア研究を専攻する学生。キルギスの特派員としてIDN・インデプスニューズのインターンシップをしている。

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