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INPS JAPAN   IDN-InDepthNews - UN INSIDER

国連の思い出と日本のアジア戦略(谷口誠元国際連合日本政府代表部特命全権大使)

Prof. Makoto Taniguchi【東京IDN=谷口誠】

米国の国連叩きにより、国連が役に立たない存在として無力化していた1980年代、ニューヨークの国連で政府代表として派遣されていた公使・参事官クラスの若手官僚は自分たちを「ゾンビ」グループと半ば卑下している状態であった。

その中で当時のソ連のセルゲイ・ラブロフ参事官はリーダー的存在であり、国連を何とかしなければ自分たちが本国に帰っても認められないと、展望を見失いつつあった同グループを鼓舞していた。

UN Secretariat Building/ K.Asagiri of INPS私も「ゾンビ」グループの一員であったが、そんな逆境の中、志を持って奮闘されておられたラブロフ氏が、現在のウラジミール・ブーチン政権を含めロシア国内で外務大臣を長期務められていることは、あの辛い国連時代も決して無意味でなかったことを雄弁に物語っていると思う。

国連という機関の有効性、そしてその存在意義は常に議論の的になるが、私は、国連というものは空気のような存在で、国連がなければ世界の各国、特に小国は困ると思う。空気の有難味というのは、普通に呼吸しているだけでは分からない。それが問題であって、空気が常に清浄であることで私たちの生命を支えているように、国連も各国にとって清浄な存在でなければならない。

私は半生を国連で過ごしたが、様々な役割の中で会議の議長を務めることを第一の仕事として選択してきた。日本の大使としての仕事も重要だが、国連の主要会議の議長を全うし、会議を成功させることの方が、結果的に日本の存在感を高めることになり、日本人として議長席に座り、各国代表が集まる中、国連の顔になることの方が日本から何万ドルのお金を拠出すより効果があると信じていた。

一例として、国連で最も困難と言われた南北対立の激しい時代の1987年の第7回UNCTAD (国連貿易開発会議) 総会の議長に押された。ジュネーブで開かれたこの会議は、世界各国から大統領・首相クラスを含め5,000人位が参加し、2ヵ月にわたって開催された。

私はどちらかというと開発途上国寄りであり、私が議長を務めることを好まない西側先進国の代表は、私の家内に「あなたのご主人は自分のキャリアに傷をつける危険な仕事をやろうとしている。議長を辞めさせて、スイスのサンモリッツかどこか山登りに連れて行け」と伝えてきた。私の家内は、「会議の議長を務めるのが主人の趣味だからそれは無理な注文だ」と押し返したそうだ。会議は徹夜に次ぐ徹夜で大変だったが、会議をまとめ上げた時の満足感は何物にも代え難いものであった。

The assembly hall of the Palace of Nations/ By Yann Forget - Own work, CC BY-SA 3.0, 長い国連勤務を終え、ニューヨークを去る時の送別会に多くの友人・知人が訪れてくれたことは未だに思い出深い。その後、パリの経済協力開発機構(OECD)事務次長に就任し、7年間のOECD時代を過ごした。OECDは国連とは全く異なった先進国主体の国際機関であったが、その中にあっても開発途上国との関係強化に努めてきた。

国連を離れ日本に戻って思ったのが、日本のこれからの立ち位置、特にアジアの中で日本がどのような役割を担うべきかという問題である。21世紀を迎え、それまでの日米欧という三極体制は過去のものとなり、これからの日本は中国、韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国と連携し、まず「東アジア共同体」を構築し、東アジアが共に発展するために、各国が互いに協力し合う体制をつくらなければならない。

Devnet Japanここで重要なことは、単なる経済的利益追求が国際関係を発展させるとは限らないこと。かつての日米貿易摩擦がかえって両国の関係を悪化させてしまったことを教訓にするべきである。新しいアジア時代を築くには、歴史問題に始まる日韓・日中関係の改善、東シナ海の領海問題の解決はもちろんのこと、アジアを強く意識した次世代の社会的・経済的リーダーを各国が共通認識の下で育成することが極めて重要となる。大変に困難な問題を含んでいるが、ここで活躍する場を与えられるのは、やはり国連であり、またDEVNETなど国際的な重要課題に取り組むNGO、NPOなど国際機関であると私は考える。とりわけDEVNET JAPANは積極的にこの問題に取り組んでおり、私は過去の経験を活かしてこの活動を強力にサポートしたいと思っている。(原文へ

INPS Japan

谷口誠氏は、日本外交官経済学者。専門は南北問題国際経済。国際連合日本政府代表部特命全権大使や日本人初の経済協力開発機構(OECD)事務次長を務めた後、早稲田大学教授、岩手県立大学学長等を歴任。2000年勲二等瑞宝章受章。

この記事は国際協力評議会Devnet Japanと共同で実施しているメディアプロジェクトの一部。

 

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