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INPS JAPAN   IDN-InDepthNews - UN INSIDER

シリア・クルド勢力の北部地域奪取に、ジレンマに直面するトルコ

【イスタンブールEurasiaNet=ドリアン・ジョーンズ】

 

トルコは今週、シリア・クルド人勢力が、政府軍から奪取したシリア北部の街からほんの数キロしか離れていないシリアトルコ国境において、戦車部隊による軍事訓練を敢行し、軍事力を誇示した。

シリア・クルド人勢力による北部諸都市(クルド人住民が多いハサカ県)の支配権奪取は、トルコ政府に警鐘を鳴らすこととなった。「ここアンカラでは多くの人々がこのニュースに驚いています。これは近年におけるトルコの歴史の中でも、最も厳しく深刻な事態の一つです。」と、軍事専門家でトルコ日刊紙「Hürriyet」のコラムニストでもあるメテハン・デミール氏は語った。

「トルコ国内のクルド人は、シリア・クルド人勢力による北部諸都市制圧を、トルコ国境地帯に将来クルド人自治州が設立される兆候であり、さらにはイラン、イラク、トルコに跨るより広範囲な地域を包含したクルド人国家建設への第一歩と受け止めるだろう。」とデミール氏は付加えた。

 
トルコも国内に少数民族クルド人(総人口7360万人の2割)による分離・独立闘争の火種を抱えている。トルコ政府は、1984年以来、クルド人の権利拡大のために闘っているとされるクルディスタン労働者党PKK:トルコ政府と米政府はテロ組織に指定している)と戦争状態にある。また、PKK兵士の多くがシリア・クルド出身である。また、制圧されたシリア北部のある街では、PKKの旗が掲げられていたとの報道があり、トルコ政府は懸念を深めている。

「我々は、トルコ国境付近に如何なるテロ組織の構築も許さない。相手がアルカイダであろうとPKKであろうと、国家の安全保障に関わる問題であると認識しており、事態に対処するための全ての選択肢を有している。」と、アフメット・ダーヴトオール外相は、7月29日に出演したあるトルコのテレビ番組の中で語った。

こうした強硬な発言は、しばしば国家主義的な国内メディアの一部を通じて広がったパニック一歩手前の怒りに満ちた国民感情を、なんとか緩和させようとする政府の試みとみられた。


「今日の混乱の原因は、トルコ政府が、国民がこうした事態に直面する準備を怠ってきたからなのです。しかし国民ならまだしも、トルコ政府までもが、シリア北部の出来事に驚いたというのは信じられません。」「シリア・クルド人は、自らの民族自決権を追求し、少なくとも自治権の獲得を目指すでしょう。トルコ政府は、いつかこうした事態が起こりうるということを、何年も前から理解していたはずです。」と、イスタンブールのカディール・ハス大学のソリ・オゼル教授(国際関係論)は語った。

シリア北部諸都市がシリア・クルド人勢力の手に陥落して以来、完全武装のトルコ軍が、このシリアのクルド人地域と国境を接するトルコ国境地帯に派遣されている。

「トルコ政府は、シリア・クルド人支配地域が、果たしてシリア・クルド人の権利の問題なのか、それとも(国境を越えた)PKKネットワークの拠点なのか、しっかり見極めるでしょう。」「そして状況次第では、トルコは実際に軍事作戦を実行する可能性もあります。」と「Hürriyet」紙のデミール氏は語った。

しかし、オゼル教授は、トルコによるいかなる軍事行動も逆効果になるだろうと考えている。この点について同教授は、「軍事介入は、私が見る限り、トルコにとって自殺行為に等しいと思います。なぜなら、トルコ軍がはたして、新たな敵と戦う準備ができているとは思えないからです。(既に国内のPKKと戦っている)トルコ軍は、シリアに侵攻すれば2つの戦線、或いはイラクのクルド勢力が関わってくれば3つの戦線を戦うことになるのです。」と語った。
 
差し当たり、トルコ政府は軍事介入よりも外交交渉に期待を寄せているようだ。イラク北部のクルド半自治地域政府は、トルコ及びシリア北部のクルド人が多数を占める地域と国境を接している。この数年間、トルコの与党「公正発展党」は、同クルド地域政府並びにマスード・バルザニ議長との緊密な関係を築いてきた(バルザニ議長は、イランに接近しアサド政権を擁護しているシーア派主導のマリキ政権とは、クルド地域から産出されるエネルギー収益の配分や自治権を巡って対立を深めている:IPSJ)。

「トルコ政府とバルザニ議長の間には緊密な対話のチャンネルが構築されています。しかし、シリアにはクルド国民評議会が多数派を占めるグループと(トルコと戦争状態にある)PKKの分派という2つの対立する派閥が確認されています。そして、バルザニ議長は、後者に対して影響力を持ち合わせていないのです。」と、イスタンブールに本拠を置くマリキ政権のシナン・ウルゲン議長は語った。

シリア情勢に対するバルザニ議長の影響力に関する信憑性について、最近ますますトルコ政府の間で疑問視する声が高まっている。シリア・クルド人が北部を掌握する前、トルコメディアは、数百人のシリア・クルド人兵士がバルザニ議長の兵士に付き添われて、シリアに帰還している様子を撮影した写真を放送した。

さらにトルコ政府の懸念を大きくしているのが、バルザニ議長が、PKKとの繋がりがある国民民主党を含むシリア・クルド人諸勢力間の協定をとりまとめたことである。ある地域の外交筋は、トルコ当局はこの協定について知っていたと指摘しているが、実際にトルコ政府がこの協定について知っていたかどうかは、未だに議論が分かれるところである。

7月26日、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相は、バルザニ議長に対して、「トルコは、これから起こりうることについて、もはや責任をとれない。」と警告した。

しかしこうした緊張関係も、トルコのダーヴトオール外相が8月1日にクルド半自治地域政府が置かれているイラクのアルビルにバルザニ議長を訪問して以降、沈静化してきている。会談後両者は、シリア問題について協力し合っていくことを約した共同声明を発表した。また、トルコ政府の怒りは、イラクのクルド人との通商関係が今後拡大していく中で、緩和されていくかもしれない。今や、イラクはトルコにとって2番目の貿易相手国であり、その大半をイラクのクルド人が占めているのである。

アナリストのウルゲン氏は、もしトルコ政府が国内のクルド紛争問題を解決するための手立てをとるならば、クルド人がトルコ国境に跨った国家を設立するのではないかという心配をする必要がなくなるだろう、と語った。またウルゲン氏は、「今後のシリア情勢の展開によっては、国内クルド人との協定内容が、トルコ政府にとってより厳しいものとなりかねない。」と警告した。

ウルゲン氏は、「トルコのクルド人は、国境の向こうで起きている出来事に刺激されて、自分たちにもできることがあるのではないかと、期待を膨らませる傾向があります。」と指摘し、シリア情勢が、トルコ政府による国内クルド人との交渉の行方に影をさしている。」と語った。(原文へ

翻訳=INPS Japan浅霧勝浩


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