|視点|ヘイリー国連大使は、自らの誤った「改革」を人権団体のせいにしている(ケネス・ロス ヒューマン・ライツ・ウォッチ代表)
【ニューヨークIDN-IPS=ケネス・ロス】
ニッキ―・ヘイリー氏は、ドナルド・トランプ政権の国連大使としてニューヨークに着任して間もなく、米国を支持しない者は「その名を書き留める(相応の対応を取る)」と述べた。当時ほとんどの人々は、ヘイリー大使は国連安全保障理事会(安保理)で米国の主張に反対した国々のことに言及しているのだと考えた。
しかし、最近になってヘイリー大使はヒューマン・ライツ・ウォッチやアムネスティ・インターナショナルに対する非難を始めた。ヘリテージ財団の会合で登壇したヘイリー大使は、両人権団体が、自身が提唱している国連人権理事会の改革案に反対することで、「ロシアと中国の側についた」と述べたのだ。
戦争の悪化を防ぐジュネーブ条約
【ジュネーブIDN=ジャムシェッド・バルーア】
戦時下にある国に住んでいる人、または近隣諸国が戦闘状態にある国に住んでいる人々の圧倒的多数が、「戦争にも制限をかける差し迫った必要性があると考えている」との新たな調査結果が出た。そうした国々の回答者の約半数が、ジュネーブ諸条約が紛争の悪化を防ぐと考えていた。
しかし、国連安全保障理事会の5常任理事国(P5)の国民は、民間人に被害と苦しみが生じることについて、紛争地や近隣諸国に住む人々よりも、「戦争の避けられない部分として仕方がない」と考える傾向にあるようだ。
|旧ユーゴスラビア|忘れ去られた人道危機
【ベオグラードIDN=ヴェスナ・ペリッチ・ジモニッチ】
激しい内戦へと発展したユーゴスラヴィア連邦の崩壊から既に20年以上が経過した。その後地域の平和は90年代には回復したが、国家の崩壊に伴って引き起こされた残虐な暴力や人道危機についてほとんど知らない人々にとっては、当時から何も変わっていないように思えるだろう。
社会学者として著名なラトコ・ボゾヴィッチ教授は、「紛争はすでに終結していますが、政治家たちが無責任な公約を掲げて政争に明け暮れ、一方で経済復興が遅々として進まない状況のなかで、人々は内向きな議論に翻弄され、将来について悲観的になっています。」と指摘したうえで、「旧ユーゴスラヴィア諸国では、各々が経験した内戦の記憶しかない若い世代が台頭してきています。」と語った。
「中立性」を拒絶して人権の側に立つ博物館
【リバプール(英国)IPS=A・D・マッケンジー】
このイングランド北部の都市にある「国際奴隷制博物館」の現代版奴隷制度の展示は、人権に光を当て、そのテーマを「全面に出す」ことを選択した博物館のひとつの例だ。
「社会正義はそれ自体では実現されません。それには積極行動主義(アクティビズム)と、リスクを取ることをいとわない民衆の存在が不可欠です。」と語るのは、国際奴隷制博物館(ISM)を運営している国立リバプール博物館の館長を務めるデイビッド・フレミング博士である。
|ネパール|人命を奪うのは地震ではなく建物…それとも不公正か?
【カトマンズIPS=ロバート・ステファニキ】
チウテ・タマンさん(70歳)は、4月25日の地震(マグニチュード7.8)発生時、自分の耕作地で作業をしていたが、あまりの揺れに最寄りの木にしがみついた。彼の妻と娘はその時家の中にいたが、とっさに外に逃げ出した。家はあっという間に倒壊し瓦礫と化した。しかし彼らは運が良かったほうだ。
「人命を奪うのは地震ではなく建物。」これは震災を経験した地域では周知の事実だが、今回の地震でネパールの人々もこの教訓を痛感することとなった。犠牲者のほぼ全員が、未熟な石工が石と泥を単純に積み重ねただけの家屋の下敷きになって落命していた。レンガやセメントは費用がかかるが、石と泥はただで入手できるため、これが一般的に普及している施工方法だった。
|ミャンマー|尊厳を復活させる-逆境に毅然と立ち向う国内避難民
【シットウェ(ミャンマー)IPS=ロブ・ジャービス、キム・ジョリッフ】
ミャンマー西部ラカイン州では、3年近く前に勃発した民族紛争で集落を追われた14万人を超える人々が、乾ききった平地や海岸沿いの湿地帯に設けられた収容所に抑留されたままになっており、必死に生き延びようとしている。
想像を絶する困難に直面して、多くの避難民が、知恵を絞り必死に働くなかで、状況に適応し自らの尊厳を守る術を見いだしてきた。
奴隷状態から自立へ:南インド、ダリット女性たちの物語
今日、違法な採掘活動とヒンドゥー寺院公認の性的人権侵害という2つの崩壊しつつある仕組みの灰燼の中から、インドで最も貧しい女性たちが持続可能な未来に向けた道筋を示しつつある。不条理な因習と社会的悪弊に苦しめられながらも、厳しい試練を闘い抜いて自由とささやかな生活を勝ち取ったダリットの人々と彼らを支える勇気ある人々の姿を取材した。
【ベラリー(インド)IPS=ステラ・ポール】
40代になるダリット女性のフリジェ・アンマさんは、ミシン台で上半身を前に傾けながら注意深くシャツの縁を縫っていた。彼女の傍には、22歳になる娘のルーパさんが、携帯電話に送られてきたメールを読みながら楽しげに笑っていた。
スポットライトを浴びる先住民族の語り
【ベルリンIPS=フランチェスカ・ジアデク】
近年、「ベルリナーレ」として知られるベルリン国際映画祭が、さまざまな場を横断して先住民族の声を発信する欧州のハブ機能を果たしつつある。さまざまな場とは例えば、「NATIVe:先住民族映画への旅」シリーズや、先住民族のアーティストが語りをし、次に参加者からの発言を求める「語りのスラム」などである。
ラテンアメリカを特集した今年のベルリナーレでは、グアラニー、ウィチョル、シャヴァンテ、ウィチ、クイクロ、マプチェ、ツォツィル、ケチュアなどの先住民族からのさまざまな声や観点を盛り込んで、ベルリンが1年で最も曇りがちなこの時期を先住民族の天賦の才で彩った。
国連人権トップ「テロとの闘いは、拷問・スパイ活動・死刑を正当化しない」
【国連INPS=タリフ・ディーン】
拷問、違法な拘禁、戦時捕虜への非人道的な処遇、強制的失踪の禁止などを禁じた様々な人権条約の法的な管理者である国連が、紛争地帯におけるテロとの闘いを根拠に、ますます多くの国が国連の諸条約違反を正当化するようになってきていることを問題視している。
ヨルダン出身のザイド・ラアド・ザイド・アル・フセイン国連人権高等弁務官は、暗に大国のあり方を批判して、「戦争がそれを許すから拷問するのだ。不快なことだがテロ対策に必要だから自国民に対するスパイ行為を行うのだ…。こうした論理が今日の世界には溢れかえっています。」と単刀直入に語った。
世界市民教育を通じた人権の推進
【ジュネーブIPS=ラヴィ・カントゥ・デヴァラコンダ】
世界中で紛争がエスカレートし人権侵害が蔓延る中、「人権教育」を広げることは容易なことではない。しかし、日本の非政府組織が「世界市民教育」のアプローチを通じてインパクトを与え始めている。
9月8日に始まった国連人権理事会の年次会合において、人権教育を拡大する継続的なキャンペーンの開幕の意味で、2つのサイドイベントが開かれた。