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INPS JAPAN   IDN-InDepthNews - UN INSIDER

モルヒネは痛みを殺すが、その値段は患者を殺す

The Bulawayo Island Hospice has been operating since 1982 and is one of the few medical facilities catering to Zimbabwe’s poor. Credit: Busani Bafana/IPS

【ブラワヨINPS=ブサニ・バファナ】

 

ギリー・ヌクベさん(仮名)が4時間ごとに必要とするモルヒネの錠剤60錠分を買うために18ドルを稼ごうとすると、娘の鶏肉売りでは2週間もかかってしまう。

失業率が70%にも達している国で、モルヒネ錠剤(1錠10mg)60錠入の瓶が18ドルというのは法外な金額である。これだけあれば、パン6斤を買うことができる。

しかし、農村部に暮らすヌクベさんのような患者には、選択の余地がない。彼女が痛みから解放されて夜眠るためには、モルヒネに頼る以外の手段がないのである。

 
ヌクベさんは、第4期(=末期)の頸ガンを患っており、既にほぼ寝たきりの状態にある。彼女はガンの治療よりも、むしろ末期ガンに伴う苦痛を少しでも和らげる処置を希望している。

アヘン由来の規制薬であるモルヒネには、ヌクベさんのような末期ガン患者の苦痛を多少なりとも和らげる効果がある。彼女は、一日当たり40mgのモルヒネ錠剤を服用できれば、ベッドから起き上がるのみならず、家の周りである程度の家事さえこなすことができる。

しかし現在の市場価格では、モルヒネ錠剤を購入できる人々は殆どおらず、必要な時でもほとんど手が届かないのが現状である。

ヌクベさんは、「ジンバブエ第二の都市ブラワヨ(首都ハラレの南西430キロ)にあるムピロ病院で放射線治療を受けるためにもう半年も待たされています。」と、苦痛を顔全体に浮かべながら、現在の心境について語った。ムピロ病院では、治療のための器材が半年以上前から故障しており、現在、ようやく新しいものを据え付けている途中とのことだった。

自宅で取材に応じたヌクベさんは、「痛みは想像を絶するものです。」と言って、パラセタモール(鎮痛解熱剤)が入った瓶を指差して、「病院から入手できたのはこれだけです。」と語った。

ジンバブエ
国内には推定7000人のガン患者がいると見られているが、少なくともブラワヨ・アイランド・ホスピス(1982年創立)からの何らかの支援を得ているヌクベさんはまだ幸運な方だ。

ホスピス職員らはIPSの取材に対して、ジンバブエの医療制度はあまりにも不十分で、患者の多くが、ガン専門医とのアポを待っている間に、死亡していると語った。中には、モルヒネ錠剤の処方箋を所持しながら、薬を取得できないまま、激しい痛みに苦しんだ挙句に亡くなったケースも少なくないという。

ブラワヨ・アイランド・ホスピスに勤務するシスター・アデレード・ニャティは、90人のガン患者を担当している。彼女は一週間に一度のペースで患者たちを巡回往診しているが、その際できる限り鎮痛剤と僅かながら食料を携行することにしている。しかし、大半の場合、苦しむ患者に彼女が提供できるのは、笑顔と抱擁、そして希望をもたせることぐらいである。

シスター・ニャティは、ホスピスの活動は、多くの苦しむガン患者にいくばくかの休息を提供できるモルヒネの寄付に依存していると語った。

「患者の大半はガンの末期段階にあり、アヘンを成分に含まない薬では、もはや痛みを軽減できない状況にあります。患者らは、私に、痛みに慣れるよう努力すると言いましたが、それは難しい試みだと思います。」とシスター・ニャティはIPSの取材に対して語った。

ジンバブエ政府は国内のガン患者数を約7000人と見積もっているが、介護関係者らは、多くの患者が医者の診断さえ得られないまま死亡していることから、実際の患者数はそれを遥かに上回っているとみている。

ガン患者に対する公的支援は極めて限られており、しかも貧しい人々にとって僅かに残された選択肢の一つであるブラワヨ・アイランド・ホスピス(ジンバブエで最も古いホスピスの一つ)が、運営費がかさむ一方でドナーからの支援が少ないため、閉鎖の危機に瀕している。

同ホスピスには看護師が5人しかおらず、しかもこの人数でブラワヨ市内の200人近いガン患者を看ている。彼女たちの活動によって患者らの苦痛はある程度軽減されているが、末期患者の抱える深刻なニーズにはとても応えられる状況にはない。

セセカイ・ヅィヴァさん(仮名)は、2010年に喉頭ガンと診断されてから、苦難の日々を過ごした。息子は彼女の命をかろうじてつなぎとめていた化学療法錠剤の購入費84ドルを捻出するために、昼夜の別なく働いた。

それでも資金が底をつくこともしばしばあり、そうした際には、ヴィヴァさんは何日間も呆然としながら激しい苦痛に耐え続けるしかなかった。結局、ヴィヴァさんは6ヶ月前に3人の十代の子供たちを残して息を引き取った。

モルヒネの錠剤や注射剤はジンバブエ国内でも製造されているが、あまりに高価すぎてほとんどの患者には手が出ない。しかし、モルヒネの粉から作られる液体(霧状)モルヒネを利用することで、事態は大きく改善するという意見が医療関係者の間にある。薬剤技師や看護師が訓練を受けることで、各医療機関でその製造が可能だというのだ。

「私たちは、多くの患者にとって、モルヒネ錠剤一瓶の費用18ドルはあまりにも高額で、手が届かないということをよく理解しています。しかも、この18ドルという費用は、4時間毎に1錠(10mg)という少ない服用量で換算しても一月あたりの費用は54ドルを上回ることになるのです。」とハラレにあるアイランド・ホスピス・サービス院長のディクソン・チファンバ博士は語った。

またチファンバ博士は、「もし医療従事者を訓練して、モルヒネ粉から液体(霧状)モルヒネを生成する環境を整えられるのならば、液体(霧状)モルヒネは、有効な選択肢だと思います。液体の方が固形に比べて(薬の)費用を低く押させることが可能ですし、公的病院を通じて薬剤を配布するうえでもより便利なのです。」と語った。
 
現在、ジンバブエ内外のパートナーとの協力のもと、主に地方の医療機関における医療従事者を対象に、液体(霧状)モルヒネの生成を訓練する試みが進められている。

ジンバブエ医薬品管理局(MCAZ
によると、病院や薬局は、ガンの症状が進んで錠剤を服用できない患者に有効な液体モルヒネを製造するために粉のモルヒネを備蓄することを認められている。

MCAZ
は、国際麻薬統制委員会(INCBと協力して、毎年ジンバブエ国内で配布するモルヒネの量を割り当てるため、同物質の国内消費に関わる統計を集積・分析している。

MCAZ
のググ・マーラング事務総長によると、2012年にはジンバブエ全体で11.25キログラムのモルヒネが配分されたが、実際に使用されたのは3.6キロであった。

またマーラング事務総長は、「アフリカにおけるモルヒネのような鎮痛剤の使用率は、南アフリカ共和国は例外として、他の地域と比較して極めて低い。」と指摘した上で、「おそらく、医療関係者は、疼痛管理に対する姿勢を変えていく必要があります。」と語った。

世界保健機構(WHO
によると、激しい苦痛に苛まれながもら、治療を受けられないでいる重症がん患者は、世界で年間480万人にのぼるという。またINCBによると、世界のモルヒネ全体の8割が先進国で使用されているという。(原文へ

翻訳=INPS Japan浅霧勝浩

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