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INPS JAPAN   IDN-InDepthNews - UN INSIDER

|ノルウェー|世界種子貯蔵庫をNGOが警戒

Svalbard Global Seed Vault

【バンガロールINPS=ケヤ・アチャルヤ】

ノルウェー領スヴァールバルにオープンした世界種子貯蔵庫( Global Seed Vault:GSV )に対し、インドをはじめ世界各地の農業NGOからは公平性を欠くその目的に非難の声が上がっている。

バンガロールを拠点とし、アフリカ・アジア・ラテンアメリカの主要途上諸国に支部を持つ農業ロビー団体GRAIN は、種子貯蔵庫の深刻な欠点は、国および民間の貯蔵庫供託者を基本的に対象とするもので、これらの種子にアクセスできない貧しい農民の権利を排除するものだと主張している。

GRAIN
は、GSVの生息域外貯蔵システムは、元来種子を生み出し、選択し、保護し、共有してきた農民たちから植物品種を奪い取ると訴える。システム確立に関わる科学的および制度的枠組みへのアクセス方法を知らない農民は排除されていると主張している。

 
GRAIN
のアジアプログラム担当官としてニューデリーに本拠を置くシャリニ・ブータニ氏は、IPSの取材に応えて「このシステムは農民が世界の最初の、そして現在も変わらぬ植物育種家であることを忘れている。したがって、元来農民たちが保全してきた種子の知的財産権やその他権利の交渉が、各国政府と種子産業のビジネスになってしまう」と述べた。

GSV
に関する決定はノルウェー政府によって行われることになるが、現在のところ信頼に足ると見なされているものの、その方針に変更はないという保証はない。ノルウェー政府は、供託者と10年間の協定を締結しており、方針が変わった場合には供託者に協定を終了する権限を認める条項が含まれている。

GSVの運営は、ノルウェー政府、世界作物多様性財団( Global Crop Diversity Trust GCDT)および北欧諸国の共同事業である北欧遺伝子資源センターの三者間協定に細かく規定されている。

GRAIN
は、GSVに関する決定事項をGCDTと共有することを主張している。GCDTは、企業から多額の資金供与を受け、世界の農業生物多様性へのアクセスおよびそれからの便益に関するあらゆる「激論」を積極的に取り上げている民間団体である。

多国籍種子企業は現在、年間300億米ドル規模の世界の種子市場の半分を支配しており、数多くの公的な植物育種プログラムを買い占め、各国政府にその管理を放棄させている。「最終的受益者は、作物多様性の崩壊の根源にあるのと同じ企業となるだろう」とGRAINの刊行物は述べている。

しかしGSVを管理する世界作物多様性財団の責任者ケアリー・ファウラー氏は、そうした批判について「スヴァールバル世界種子貯蔵庫の目的と活動を誤って伝えており、不正確で誤解を与えるような好ましくない形でGCDTについて論じている」と述べている。

ファウラー氏はIPSの取材に電子メールで応えて「種子貯蔵庫は、165カ国を超す国々ならびに国連食糧機関(FAO)の遺伝子資源委員会に歓迎されており、すでに先進諸国や途上諸国ならびに種子貯蔵NGOに利用されている(ただし企業は使用していない)」と語った。

北極点から約1,000km、摂氏マイナス6度の永久凍土層深くに建てられたGSVには、さらに低温のマイナス8度の冷凍庫3室があり、450万組の種子を貯蔵できる。

たとえば核戦争や自然災害など深刻な災害に世界の農業が見舞われた時でも、各国は「地球最後の日の貯蔵庫」とも広く言われているこの貯蔵庫を頼って、種子を取り出し、食糧生産を再開することができる。

しかし、農業保全の策にこだわり続けるGSVに不満を抱いている人は多い。

コミュニティの種子銀行ネットワークを通じて農場における種子保全活動が評価されて2004年に国連の赤道賞を受賞した GREEN財団は、遺伝的多様性を保護するという貯蔵庫の主張は「幻想」にすぎないと述べている。GREEN財団は、バンガロールを本拠に主に女性が運営に当たっている団体である。

「リオデジャネイロでの国連環境開発会議(UNCED生物多様性条約(CBDが、遺伝子銀行には限界があることを認識してからすでに10年が経つ。その固有の限界とは、大規模な停電はもとより、これらの銀行への農民のアクセスを除外している点、冷凍で保管された種子を異なる環境条件下で栽培しようとしても発育しない点などである」と、GREEN財団の創設者ヴァナジャ・ラムプラサド氏はIPSの取材に応えて述べた。「世界の食糧は冷凍庫の中で安全に保管されているとの考えだが、その裏には、悲しむべき科学的注釈がある」

GREEN
財団、GRAIN、デカン開発協会(DDS)などのNGOは、農民たちが畑で種子を育て、保全し、これらを他の農民たちと交換していくことが遺伝的多様性と資源を保全するもっとも確実な方法と主張する。

ラムプラサド氏は、この10年、遺伝資源を収集し、それらを畑で保全しようという努力が世界的に行われており、遺伝資源は育種のためだけのものという概念を打ち破ってきたと指摘。「これによって、遺伝資源の生息域内保全は世界の何百万人の食糧安全保障だけでなく、食糧主権にとっても不可欠である事実が再確認されている」と述べている。

ハイデラバードに本拠を置き、貧困層のダリット(インドのカースト最下層)の女性の農村におけるエンパワーメントに取り組み、ミレット(キビ、アワの一種)など在来の穀類の保全を行っているDDSは、科学界が冷凍貯蔵システムによって作物の多様性を保全できるとは考えていない。

DDS
の創設者PV・サティーシュ氏は、「世界の豊富な種子は、畑で、世界の農村地域でしか生き残ることができない。GSVはこうした種子を農民から奪い取り、食物連鎖の最初のリンクを打ち壊す」と述べている。

GSVの供託者は現在、FAOの下で運営されている国際農業研究協議グループ(CGIARで、国際社会に代わって受託協定に基づき世界各地の作物を保管する15の遺伝子銀行を所有する。

GRAIN
は、受託制度は結局CGIARに貯蔵庫の保管物への「ほぼ排他的」なアクセス権を与えるものであり、農民を排除するものと非難している。

インドやアジアからの登録は、CGIARの傘下にあるインドのコメ研究所やハイデラバードにある国際半乾燥地熱帯作物研究所(ICRISAT)の貯蔵物の一部で、GSVに保管されることになる。GRAINのブータニ氏は、「この貯蔵庫はむしろ、農民の重要な伝統的知識を『略奪』するものとして知られる生命科学産業が必要としているもの」と述べている。

ICRISAT
の報道発表は、貯蔵庫における種子複製保全に同組織が参画することにより、世界の農業を気候変動から守る努力が一層強化されるだろうと述べている。しかしICRISATから受け渡される種子や遺伝資源は、気候変動に耐え得る耐寒性の乾地作物であるモロコシ、トウジンビエ、ヒヨコ豆、キ豆、落花生、ミレットなどである。

ブータニ氏は、この戦略とともに採用されるべき保全方法があると述べ、スヴァールバルが確実な保全方法と信じるに足るものはないと言う。

ICRISAT
は、世界各国で現在運営されている1400あまりの遺伝子銀行を通じて提供されている保全例を挙げている。たとえば、エチオピアやルワンダの内戦中モロコシの遺伝資源が失われたが、遺伝子銀行に保管されていた貯蔵物から補充された。

GRAIN
は、各国政府は、国際遺伝子銀行よりむしろ、まず自国の農民や市場を支援し、革新的な農業や種子交換に携わっている農民の手に種子を委ねるべきと提言している。農業生物多様性資産を有する開発途上諸国は、企業支配の農業協定に同意する前に、自国の農民の利益を守ることが必要だ。

ファウラー氏は、生息域外および域内の保全は補完的なものであるという見解をGCDTは支持すると語った。

翻訳=INPS Japan浅霧勝浩

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