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INPS JAPAN   IDN-InDepthNews - UN INSIDER

│環境│世界に衝撃与えたアラル海の縮小

【ヌクスIDN=ラウシャン・バリカノフ】

 

国連の潘基文事務総長は、4月4日、消滅しつつあるアラル海を上空から視察した。また、岸辺にたった潘事務総長は、「『砂に埋まったまま打ち捨てられた船の墓場』以外には何も見えない。」と語った。

アラル海は、カザフスタンとウズベキスタンの間にある。かつては、世界第4位の広さを誇る内海であった。しかし、いまや、50年前の面積のわずか4分の1しか残されていない。

 
アラル海
は「島々の海」を意味し、かつてこの内海に点在した1500以上の島々が語源となっている。人類は、数千年に亘って、アラル盆地に注ぐ河川(アムダリヤ川、シルダリヤ川)の豊かな水の恩恵を受けてきた。残されている記録によれば、20世紀初頭には、アラル海周辺における灌漑農業は十分に持続可能な状況であった。

しかし、60年代から70年代に入ると、乾燥したソヴィエト中央アジアにおける綿生産のための水の消費量が多くなり、水が枯渇し始めた。アラル海の水面はかつて66,100㎡(琵琶湖の約100倍)であったが、1987年までには水量の60%が失われ、水深は14メートル減少した。その結果、水中の塩分濃度が2倍になりアラル海での漁業は不可能となった。

また、水位の減少により、アラル海とそこに流れ込む河川の生態系は破壊されてしまった。干上がった大地には大量の塩分と有害物質が残され、それが風で巻き上げられて周辺住民に健康被害が発生することとなった。ガンなどの発生率はきわめて高いと伝えられている。

現在ではアラル海の面積は50年前の25%程度に縮小し、北側の小アラル海と南側の大アラル海に分かれている。小アラル海についてはシルダリア川デルタにおける堤防建設で水量の回復が確保されたが、専門家よれば、大アラル海は向こう15年以内に消滅する見通しである。

中東アジア歴訪の最後の訪問地ウズベキスタンで同国シャヴカト・ミルズィヤエフ首相とヘリコプターでアラル海を視察した潘事務総長は、ヌクスでの記者会見で、「(アラル海の惨状にはショックを受けました。これは明らかに世界最悪の環境破壊のひとつです。あの広大な海が消失するとは深い悲しみとともに強烈な印象が私の心に刻まれました。」と語った。この環境破壊の結果、アラル海周辺の住民は病気になり、土地は汚染され、塩分と有害物質を含んだ埃は、風に運ばれて遠くは北極圏にまで達する事態となっている。

「アラル海で起こっていることは、私たちが環境を無視して乱開発し、共通の自然資源を破壊すれば、どのような事態になるかをまざまざと示しています。」
 
 
その後首都タシケントで開かれた夕食会で講演した潘事務総長は、「今回のアラル海の上空からの視察は、2008年に視察したアフリカのチャド湖を彷彿とさせるものでした。チャド湖の場合もアラル海の場合と同じく、数百万人におよぶ周辺住民に深刻な被害を及ぼしながら水面の大半が消滅してきたのです。」

「私は、アラル海の悲劇は中央アジア諸国のみならず、全世界の集団責任だと思います。今回の視察でアラル海の問題に取り組む中央アジア諸国政府の様々な試みを知り、感銘を受けました。」

潘事務総長は、中央アジア5カ国のイニシャチブで設立されたアラル海救済国際基金を評価するとともに、同基金の努力に国連も支援していくことを約束した。

「私たちは地球環境に対してより良き管理人にならなければなりません。私たちは子々孫々が安心して環境的にも持続可能な生活ができるよう、地球環境を守り受け継いでいく道義的、政治的責務があるのです。」と、潘事務総長は語った。

アラル海とそこに流れ込む河川の生態系は、とりわけ塩分濃度の上昇によりほぼ破壊された。またアラル海周辺の土壌は汚染され地域住民は水不足と様々な健康被害に苦しんでいる。

水面が後退したことで塩分と有害物質で覆われた湖底が表出し、これに風が吹き付け、有毒な埃となって周辺地域に拡散している。アラル海周辺の住民の間では高い率で癌をはじめとする様々な呼吸器系の病気が発症している。地域の穀物も土壌に堆積した塩分により破壊された。

国連は、このまま何の手当てもしなければ、アラル海は2020年には消滅してしまうと見積もっている。

アラル海の生態系の破壊は、突然始まり急速に進行した。1960年代の初頭から、ソ連が「自然改造計画」の一環として実施した綿花栽培のための灌漑やアムダリア川の上流部にカラクーム運河を建設したことにより、アラル海の水位は激減した。

その後もウズベキスタン、カザフスタンをはじめとする旧ソ連を構成する中央アジア諸国は、漁獲高の減少、水質・土壌汚染、汚染大気物質の飛散を含む様々な環境被害が広がっているにもかかわらず、綿花をはじめとした輸出用作物を栽培するためにアラル海に流入するはずの水を使い続けた。

灌漑農業を編重した政策はその他にも直接的な被害を引き起こした。この時期、デリケートな生態系を持つ流入河川のデルタ地帯は穀物地帯に転換され、アラル盆地周辺の全地域において大量の殺虫剤が使用された結果、アラル海の水質汚染は深刻なレベルで悪化していった。また過剰な灌漑の結果、多くの耕作地に塩が集積された。

1990年代初頭までにアラル海の表面積は約半分に、水量は25%程度まで減少した。その結果、多くの副次的影響が表面化し始めた。例えば地域の気候が、より大陸的なものとなり、作物の生育期間が短くなったことから、綿花から水稲に切り替える農家が続出した。しかし水稲は綿花よりより多くの水を必要とするため問題はさらに深刻化した。

アラル海の縮小によりむき出しとなった地表は28,000㎡に及び、推定4300万トンの塩分と殺虫剤を含む堆積物が強風で周辺地域に運ばれ、深刻な健康被害をもたらしている。

このアラル海を起源とする汚染された砂塵嵐は、遠くは北極圏やパキスタンでも観測されている。その結果、特に呼吸器疾患が広がり、咽喉癌が急増した。またアラル海地域の植生の減少は年間降雨量の減少に繋がったとみられている。

カザフスタン・ウズベキスタン・トルクメニスタン・タジキスタン・キルギスは1992年にアラル海再生に向けた相互協力を約した協定を締結したが、その後ほとんど有効な対策はとられなかった。同諸国は1994年1月に再び会合を開き、各国が節水を努力しアラル海救済国際基金に拠出することが合意された。しかし、同基金によると、アラル海の縮小は今日も進行中で、南側の大アラル海は消滅の危機に瀕しており、その将来は不透明なままである。

翻訳=INPS Japan浅霧勝浩


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