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|ボリビア|峻険な山河を超えて学校へ

A group of indigenous children in the last year of primary school, standing in front of the Miskhamayu school. Credit: Marisabel Bellido/IPS

【ミスカマユ(ボリビア)IPS=マリザベル・ベジード】

 

14才になるレイナルドは、まだ暗いうちから家を出発し、小さな先住民の部落にある学校まで片道2時間かけて登校する。峡谷を抜ける通学路は急峻で狭く、途中にはいくつも川を渡らなければならない。

また放課後、教科書やノートでいっぱいのリュックを背負って、石と荊棘だらけの道のりをサンダル履きでとぼとぼと歩いて帰宅することには、もう暗くなっている。

 
しかし、ボリビア高地の先住民族居住地帯で遠距離通学している子どもたちにとって、レイナルドのように過酷な通学条件をこなしているケースは珍しいことではない。

 
レイナルドの学校は最も近い街から7キロ離れたところにあるが、道らしき道は整備されていない。記者はこの学校に取材で2日間過ごしたが、朝になると、この粗末な施設で勉強する決意にあふれた生徒たちが岩だらけの道を乗り越えて各地から登校してきた。

彼の通うミスカマユ統合学校は、ボリビア各地に散らばる辺鄙な土地にある学校のひとつで、他の多くの学校と同じように、殆どの場合、連邦政府や地方政府からの支援を得ていない。

校舎の中には、かつて古い大農場(ハシエンダ)の建物を学校用に改装したものなどがある。多くの場合、基本的な設備さえ整っておらず、中にはドアがないものや、窓にガラスが入っていないもの、ひどいものになると屋根がなく教室が雨ざらしになるものもある。また電気が通っている施設はほとんどない。

ミスカマユ統合学校も例外ではない。何年も前、この学校がボリビアで著名な民族音楽グループ「ロス・マシス」による資金援助を得ていた当時は、この地域でも有数の有名校だったが、今ではボリビア政府の管轄下におかれている。しかし政府が管理義務を怠っているのは、荒れ果てた校舎を一目見れば明らかである。

レイナルドは義務教育の最後の年を終えようとしている。彼の家族はミスカマユから12キロ離れたモレ・ウアタに住んでおり、この地域の大半の家族と同様、農業と世界的に有名なハンドメイドの織物で生計を立てている。

両村落とも、ボリビア南東部チュキサカ県(県都はスクレ)タラブコ市郊外の標高約3300メートルの山間に位置している。

スクレ市
(ボリビアの憲法上の首都で最高裁判所の所在地)とタラブコ市間の距離は65キロメートルだが移動には車で2時間を要する。また、ミスカマユ村にたどり着くには、タラブコ市から徒歩でさらに2時間歩かなければならない。

貧困に伴う未就学の問題(学校に全く通ったことがないか、通っても1年以内に退学)も、先住民族の子どもたちにとって、重くのしかかっている。レイナルドの場合、8人の兄弟姉妹のうち、5人しか学校に行っていない。国際連合児童基金(ユニセフ)が今年発表した調査によると、ボリビア先住民の子どもの平均12.3%が、未就学児童である。

農村地帯では、この数値が17.5%にまで跳ね上がる。ボリビアでは人口の35%が農村部に居住しており、貧困率が最も高いのも農村部である。公式統計によると農村人口の75%が貧困層で、その内64%が1日あたり1ドル以下の生活を送っている。

ユニセフ他の国際機関が指摘しているように、ボリビアの義務教育制度は8年制で授業料も無料である。さらに文部省も就学率100%に向けた努力を行っているが、依然として学校に通わない先住民の子供たちがあとを絶たない。

ミスカマユ統合学校で教師をしているカルメン・ローザ・サンチェス氏は、ボリビアの先住民の間でドロップアウト率が高い原因として、農村部における3つの要因(インフラの問題、人口流出も問題、高い貧困レベル)を挙げた。

またサンチェス氏は、中でも農村部の先住民の子ども達が直面している最大の障壁として、言語の問題を挙げた。ボリビアでは、1060万人の人口のうち6割以上が、36の先住民族に属している。

ミスカマユ統合学校では120人の児童のほとんどがヤンパラ・スユ族であり、すべての児童の母語がケチュア語である。しかし、教室では彼らにとっての第2言語であるスペイン語で授業が行われている。

初等教育の最初の3年間では母語を使っているが、中等教育に近づくにつれ、スペイン語を使う頻度が高くなってくる。教員たちにはスペイン語しか理解できない者や農村部の生徒やコミュニティーに対する理解が低い者も少なくなく、次第に教員と児童との間のコミュニケーションが難しくなってくる。他方、スペイン語を母語とする児童が多い都市部では、あまりこのような問題は生じていない。

もうひとつの問題は、農村部の生徒たちは母語に流暢だが、一般的に母語で書かないため、スペイン語を加えた2カ国語で読み書きを覚えるのが至難の技となっている。

文部省は農村部における教育環境を改善し、ドロップアウト率を抑えるため、全ての教師がスペイン語に加えて先住民の言語を扱えるよう訓練するプログラムを導入した。しかし、ミスカマユ統合学校の教師らによると、いまのところその効果は限定的だという。

また、8人の子どもを持つニコラス・フェルナンデス氏によると、農村部の生徒たちが直面している今一つの大きな問題は、如何に進学して中等教育や大学教育を受けるかだという。

「うちの子供たちは、当初はここで学校に通わせましたが、中等教育レベルで教えられる先生方は5人しかおらず、やむを得ずスクレの学校に入れました。その他は、高校卒業後に就職したり大学に進学しています。」とフェルナンデス氏は語った。しかしこの地域よりももっと僻地に行けば、一人の先生が全ての学年と教科を教えている一教室しかない学校もある。

また、レイナルドのケースのように、農村部では小学校や中学校が、生徒たちの自宅から遠く、10キロメートルを超える場合も少なくないという問題がある。この問題に対応するために、学校によっては宿泊施設を備えているものもある。そうした宿泊施設を併設した学校は、ケチュア語で「yachaywasis(知識の家)」と呼ばれて

yachaywasisは自宅が遠い生徒に宿泊先を提供しています。そうした生徒たちは、日曜日の夜に施設に来訪し、金曜日の午後に自宅に向けて帰ります。そして学校では、講師が生徒たちの支援をしています。」とセラート・ミランダ氏は語った。

また文部省は、ボリビアが多民族国家であり、教育制度も多文化・多言語に基づくものでなくてはならないとした2009年の憲法改正の内容を実施に移すべく、取り組んでいる。

具体的には、ボリビア国内の先住民のニーズを最優先し、レイナルドのような多くの先住民の若者らが直面してきた障害を克服するような新たな教育法の実施に取り組んでいる。

14才の苦学少年レイナルドは、「あなたは英雄だ」と言われて首を横に振った。「僕は単にもっと勉強をして卒業し、いつか大学に行きたいだけなのです。」――彼は静かに、しかし決然とそう言った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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