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│タイ│学問の自由の試金石となる王政論議

【バンコクIPS=マルワーン・マカン-マルカール】

 

タマサート大学の歴史学教授ソムサック・ジェムティーラサクル氏(53歳)は、タイ社会のタブーに触れたことから、昨年12月の中旬以来、様々な非難・中傷に悩まされている。彼のやったことは、タイの国体である王政に関して異なる見方を提示しようとしたことである。

ソムサック教授が12月10日の憲法記念日の講演で言及したのは、不敬罪を規定した刑法112条の見直し、特権を持った枢密院の役割の見直し、王政に関する「一方的見方」を刷り込む教育の見直しなどであった。

本人は、決して王政転覆を狙ったものではないと語る。「私はただ、変化する世界とともに王政も変わる必要があるということ、そして、人々がそれについて自由に討論する必要があるという自分の主張を述べただけです。」とソムチャック教授は語った。

 
しかし、この講演以降、彼の自宅には脅迫電話が入るようになり、怪しい男がバイクに乗って彼をつけ回すようになった。また彼のフェイスブックには、「タイから出ていけ」「おまえは投獄されるべきだ」「おまえは善良なタイ人ではない」等の書き込みがなされた。また軍関係者の中には、今後は言葉の脅迫にとどまらないだろうと警告する向きもいる。

タイ陸軍のプラユット・ジャンオーチャー司令官は、4月7日のインタビューの中で、名指しを避けつつも、(ソムチャック教授を)「体制を転覆」しようとする「精神異常の学者」を決めつけ非難した。

チュラロンコン大学政治学部のヴェングラット・ニティポ助教授は、「(ソムチャット教授が提起した)諸課題は、学術界で議論するに当たり、最も気を遣わなければならないテーマです。私たちは法律の枠から逸脱しないよう、いつも議論の範囲を制限し、発言内容を自ら検閲せざるを得ないのです。」と語った。

またニティポ助教授は、「ソムチャック教授を脅迫したり、逮捕しようとする動きは、かえってこの問題を巡るタイ社会の内部対立を深めることになりかねません。タイの学術界は、この問題について議論をリードしていく役割があると思います。」と語った。


このように学術界が王党派や、軍、保守政界に対して公然と議論を挑む今日の現状は、タイの政治文化を研究してきた専門家の間で「前例のない動き」と見られている。

米国のタイ政治学者デイヴィッド・ストレックフス氏は、「制度としての王政を批判的に検証し民主主義を一層前進させようとする組織的なアプローチは、タイ現代史において初めての動きだと思います。ソムチャット教授と彼を支持するグループは、王室を非難が及ばない位置に据えてきた1947年以来の法律にあえて挑戦することで、君主制度を立憲制が敷かれた後のあるべき場所に位置付けようとしているのです。」と語った。

1939年までシャムとして知られたタイは、1932年まで絶対王政を強いていたが、同年フランス留学経験をもつ改革派を中心とする立憲革命が勃発し立憲君主制が打ち立てられ、民主化への道が開かれた。その後タイは、野心的な軍事指導者達による18回のクーデターと一連の軍事独裁政権を経験してきた。

タイには王室に関する不敬罪(禁固3年~15年)があり、IPSの調べによると、2009年には164件が立件されている。投獄されたのは、政治活動家や、王政を侮辱するようなコメントをウェブに書き込んだ者などである。なお、野党議員1名と学者1名が不敬罪に問われ国外逃亡している。

近年、政府当局による大学への締め付けが強まっている。あるバンコクの大学では、タイの民主主義における王政の役割について尋ねられた学生の試験答案を開示するよう政府から要求があった。また、ウェブ上で王政について記述しただけで大学への入学を拒否された学生の事例もあった。さらに消息筋の情報によると、政府の治安部門の機関から各大学に対して、不敬罪にあたる恐れのある学内グループを監視するよう要請があったという。

しかし、ソムチャック教授らの行動に触発され、王政について議論したいという学生たちは増えており、彼らの欲求がこうした当局からの締め付けで抑えられているわけではない。タマサート大学のある学生は報復を恐れて匿名を条件に、「これは学問のやり方で議論していかねばならないテーマなのです。」と記者に語ってくれた。

タイにおける王政のありかたを巡る諸議論について報告する。(原文へ

翻訳/サマリ=IPS Japan浅霧勝浩


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