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INPS JAPAN   IDN-InDepthNews - UN INSIDER

|視点|近代医療の促進と伝統民族医療の融合が全人類の健康福祉向上に必要(廣瀬輝夫秀明大学名誉教授、DEVNET JAPAN顧問)

Dr. Teruo Hirose 【東京IDN=廣瀬輝夫】

日本の戦後自由主義者であり、参議院議員・文部政務次官として吉田茂首相と共にサンフランシスコ平和条約(昭和27年)に臨んだ偉大な父の影響を受け、私も世界の平和社会実現に向けて外交官を目指していたが、やがて一人でも多くの命を救うことのできる職業、医師になることを志すようになった。

医学生としてアメリカ合衆国に留学し、当時まだ発展途上であった心臓外科の分野に進む希望が受け入れられ、フィラデルフィア州ハーネマン大学に心臓外科を創設したチャールス.P.ペリー教授の下で、心臓外科手術法を研究する機会を得た。

その時の研究から、人体に異物を挿入すれば、個体免疫の拒絶反応による挿入組織拒否の拒絶反応が避けられないため、自家組織保存が最も望ましいとの結論に至り、全ての手術術式にその考えを応用している。

それ以来、私が長年携わった術式を簡単に紹介しよう。

私がアメリカで研究していた頃に、心臓移植や人工心臓の技術研究が発展してきたが、動物実験の結果、どちらも拒絶反応により長期生存が不可能であることが確信されたため、私は患者自身の自己組織による修復を主張してきた。そして、1958年に拍動している心臓に対し、拡大鏡を使用して狭窄した三本主幹冠動脈に患者の自家動脈血管を直接吻合することに成功した。現在の冠動脈バイパス手術のことである。

次に、例えそれが自己保存血液であっても宗教的理由により輸血を拒否するエホバの証人教徒7000例に、300例の開心術を含めて無輸血手術を施行し、全症例のうち100例は血液濃度が通常の5分の1、血色素量3gの患者であっても死亡例が無く、骨盤臓器全摘出や大動脈瘤を含めて死亡率は0.5%に留まる結果を得た。

無輸血手術を敢行したのは、「その主張が他人を害さない限り、宗教を理由に輸血ができないとする患者に対し、手術法を改善してその要望に応じるべきである」という私の信条からである。現在では人工心肺の改良も重なり、開心術の3分の1が無輸血で行われるようになった。

以上、発展著しい心臓外科の経験を振り返り、医療介護は可能な限り最高で最適な診療を平等に全人類に施行すべきであると信ずるが、私自身が独自に世界137ヵ国の医療制度と伝統医療を視察分析した結果、国民1人当たりの医療費が3000ドル以上の国はたった20ヶ国に過ぎず、残り大半の発展途上国、新興国と呼ばれる110ヵ国の国々は、100~300ドルであった。

DEVNET JAPANそのため、全人類の70%は好むと好まざるとにかかわらず民族伝統医療に依存せざるを得ないのであり、三大宗教(キリスト教、イスラム教、仏教)の教義的強制による医療的価値観への侵食は、原住民が歴史的伝統により築いた健康支持の喪失に繋がりかねないと危惧される。

そこで、無害な従来信仰の宗教と伝統医療を保存し、同時に危険な信仰や迷信、女性割礼および小児妊娠等を排除しながら近代医療との融合を図っていく必要がある。もちろん、上下水道・道路網の整備、安全な飲料水の供給や食料事情の改善、最低限の設備を擁した近代医療診療所の設置など、まず感染症の予防に努めなければならない。

このように、平等な医療を実現するためには、近代医療技術の普及以前に、各国の地域社会や宗教、伝統医療を正しく理解し、その上で有効な選択肢を啓蒙していかなくてはならない。そのためには、医療の専門家だけでなく、政治家や社会科学諸分野の専門家の結集が求められており、国連など世界的視野を有する組織のコーディネートは必要不可欠であると考える。(原文へ

INPS Japan/GCC

廣瀬輝夫氏は心臓外科医、国際融合医療協会理事長、秀明大学名誉教授。東京大学教養学部卒千葉大医卒。1954年心臓外科研究のため渡米、シカゴとフィラデルフィアで心臓外科を研究。1974年~89年、ニューヨーク医大臨床外科教授。世界初の無血人工心肺や冠動脈バイパス手術を開発。日本人として初めて米国医師会功労賞を受賞。東洋人初の米国胸部外科学会評議員。2000年~2006年、秀明大学医療経営学科長、主任教授に就任。医学・医療、医療制度、生命倫理など幅広い分野に渡る英文、邦文の論文・著書多数。

この記事は国際協力評議会(GCC)がDevnet Japanと共同で実施しているメディアプロジェクトの一部。